研究実績の概要 |
本研究は国際エピステミック・コミュニティ(Transnational Epistemic Communities、知識共同体)と国際政策協調の理論(Haas, 1992)をベースに、国際知識共同体と外交政策における相互認知再形成との関連性の分析枠組みを構築する。そして、米中、日中関係の事例を用いて実証研究し、国際知識共同体の国際関係における相互認知再形成のメカニズムを解明した。具体的には、下記のことを明らかにした。①中国台頭による国際システムの転換期(critical juncture)に、従来の相互認知均衡(perception equilibrium)が崩れることを明らかにした。②急増する不確実への解釈の知的需要が高まり、米中、日中の知識界は新しい権威的な相互認知形成に向けての競争も激しくなっていることを解明した。③米国と中国、日本と中国の知識エリート層をそれぞれ5つのグループに分類し、2000年代からの認知の変遷を追跡する。下記の二組の事例を通じ実証研究を行う。(1)2003-2005年、米中間における国際知識共同体の成功例;日中間における「対日新思考」をめぐって日中国際知識共同体が構築せず、関係後退の失敗例;(2)2010-2012年、米中間における米中共同レポートの成功例;日中間における日中友好新21世紀委員会が知識共同体として機能しなかった失敗例。⑤国際知識共同体による「新思考」(new thinking)の政策に与える影響力は以下の三つの指標で検証する。第一に「新思考」の政府公式ナレーティブ(official narratives)の変化に反映される状況、第二に「新思考」の政府間の協力体制に反映される状況、第三に「新思考」の政府間の協力成果に反映される状況。
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