公募研究
二度の口頭発表を行い、それぞれの要旨を和文・英文にてプロシーディングスに掲載した他、一篇の論文を発表した。まず5月に国立民族学博物館で行われた第3回研究大会においては、「民族誌データに基づく人類集団動態モデルの構築:本研究がめざすもの」と題して口頭発表を行い、狩猟採集民社会の動態にかかわるドイツ語圏民族学における蓄積をもとに、2つの仮説を提唱した。それとともに、本研究の目的について概説した。12月に東京大学で開かれた第4回研究大会では、「ストーンボイリングおよび関連した文化革新/退行についての民族誌データ」という題目で、A01班の中沢祐一氏と先史時代の食品加工にかんする民族誌・考古資料の比較を行い、学際的アプローチに取り組んだ。3月に刊行された報告書『人類集団の拡散と定着にともなう文化・行動変化の文化人類学的モデル構築』(PaleoAsia Project Series; 13)には主として12月の発表内容にもとづき、「ストーンボイリングをめぐる文化の〈革新〉と〈退行〉」という論文を寄稿した。ストーンボイリングを対象とするケース・スタディから明らかとなったのは、土器・鉄器といった文化の〈革新〉(innovation)によって、古い技術であるストーンボイリングは駆逐される傾向が強かったこと、しかしそれにも関わらず保持された例も少なくないことである。これは、ある文化要素が採用されるか否かという選択においては多様なファクターが働くことを示している。つまり文化の〈革新〉や〈退行〉、また保持され続ける要素などについては、ただちに定量的モデルが構築できるとは考えにくい。具体的な民族誌データを参照しつつ、考古学的推論を行なってゆくことが可能であるし、必要でもあると思われる。
2: おおむね順調に進展している
研究代表者のこれまでの知見をもとに、研究大会において新たな視角および動向にふれることで、共同研究という道が開かれたことは予想以上の展開であった。しかし一方において動態モデルの構築のためには、まだデータが不足しており、物質文化の調査もさらに必要である。
今年度はドイツ語圏の民族学博物館において物質文化の調査に従事するとともに、不足している文献データの収集に努め、現段階で構築しうる動態モデルを描きだす予定である。
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野林厚志(編)『パレオアジア文化史学 アジア新人文化形成プロセスの総合的研究:人類集団の拡散と定着にともなう文化・行動変化の文化人類学的モデル構築』(PaleoAsia Project Series; 13)
巻: 1 ページ: 48-67
月刊みんぱく
巻: 483 ページ: 14-15
篠田知和基(編)『文化英雄その他』
巻: 1 ページ: 19-32
Mateffy, Attila & Gyorgy Szabados (eds.), Shamanhood and Mythology: Archaic Techniques of Ecstasy and Current Techniques of Research.
巻: 1 ページ: 471-480