研究領域 | π造形科学: 電子と構造のダイナミズム制御による新機能創出 |
研究課題/領域番号 |
17H05141
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
桑原 純平 筑波大学, 数理物質系, 講師 (70466655)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 三成分連結反応 / 含窒素芳香族化合物 / 有機電子デバイス |
研究実績の概要 |
本研究では、芳香族アミン、アルデヒド、アルキンの三成分連結反応を合成の鍵段階とし、機能性材料の開発および屈曲した新たなπ分子の合成を目標としている。 三成分連結反応を高効率化し、出発原料の組み合わせを変えるだけで多様な含窒素π化合物を一段階で合成できるようにする。そのためにまず、ルイス酸触媒、酸化剤の選定を中心に反応条件を最適化する。さらに、最適化した三成分連結反応を利用し、凝集誘起発光、熱活性型遅延蛍光、トランジスタ特性の機能を有する分子の合成へと展開する。各機能を、固体状態での発光量子収率、発光寿命の温度依存性、有機電界効果トランジスタにおける移動度等から評価する。その結果を分子設計にフィードバックし、迅速な再合成、評価を行なうことで高特性材料を開発する。さらに、屈曲した新たなπ分子の合成においては、同様の手法を応用して曲がったπ共役を有するカーボンナノリングを構築する計画である。最終的には、分子間のπ-π相互作用や発光特性を各種分光法にて評価した上で、内包した化合物へのエネルギー移動など、環状構造に特有の機能を明らかにする。 本年度は特に、反応条件の探索を中心に検討を行い、適切なルイス酸および酸化剤を見出した。モデル反応を設定し、三成分連結反応が円滑に進行する条件を探索した。その結果、反応を促進し、反応後の除去が容易なルイス酸としてBF3を、副反応を抑制する酸化剤としてDDQを見出した。これらの条件を利用して、目的とする化合物群の合成へと展開している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
芳香族アミン、アルデヒド、アルキンの三成分連結反応を進行させるための条件検討を行い、高い選択性と効率で進行する条件が見出されていることから概ね順調に進展していると考えられる。 本研究の基礎となる三成分連結反応の条件検討を行い、ルイス酸としてBF3が適しており、DDQのような酸化剤の存在下において目的の反応が進行することを明らかにした。条件検討のためにモデル反応を設定し、ルイス酸と酸化剤の検討を行った。その結果、BF3が最も効率良く反応を進行させる上に、反応後の除去も容易であることが明らかになった。また、DDQを用いることで副反応が抑制され、目的とするアントラゾリン骨格を有する分子が得られている。一方で、これまでに見出した反応条件では、反応の進行がアルキンの構造に強く依存することから、より一般性のある反応条件の探索を引き続き行なっている。 反応条件の確立と並行して、目的としたπ共役分子材料の合成にも着手しており、熱活性型遅延蛍光が期待できる分子の合成の過程にある。
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今後の研究の推進方策 |
29年度に引き続き合成条件の最適化を行い、適応範囲の広い合成手法を確立する。続いてその手法を用いて、機能性材料の合成を行なう。得られた材料は、基礎物性の測定を行なった後に、デバイスに実装して評価する。評価結果を基に新たな分子の設計、迅速な再合成、評価を繰り返すことで高特性材料を開発していく。さらに、高い機能を有する分子をπ共役高分子化に組み込むことで、高分子に特有の性質を活かした展開を図る。 機能性分子の開発に加え、屈曲したπ分子化合物の合成にも取り組む。まず比較的構築が容易な柔軟な構造の環状化合物から段階的に剛直な構造へと変換し、曲がったπ共役を有するカーボンナノリングを合成する。一段階目は、金属をテンプレートとして用いることで、選択的に環状化合物を合成する。その後、還元反応とアルキンの環化付加反応を経ることで、ナノリングを構築する。得られるナノリングは、単結晶X線構造解析にて三次元構造を明らかにし、芳香環のダイナミクスをNMR等から評価する。続いて分子間のπ-π相互作用や発光特性を各種分光法にて評価した上で、内包した化合物へのエネルギー移動など、環状構造に特有の機能を明らかにする。さらに、ナノリングの構築後に環構造の一部を変換する方法を確立し、構造の多様化を可能にする。
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