研究領域 | π造形科学: 電子と構造のダイナミズム制御による新機能創出 |
研究課題/領域番号 |
17H05144
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
長谷川 達生 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (00242016)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 有機半導体 / 有機エレクトロニクス / プリンテッドエレクトロニクス / 二分子膜 / 超薄膜 |
研究実績の概要 |
本研究は、パイ電子骨格をアルキル鎖で置換したある種の非対称分子がヘリンボーン型二分子膜構造による優れた層状結晶性を示すことを手がかりに、二分子膜を単位とする層状構造の積層数や積層様式を自在に制御した層状分子集積システムの構築を目的とする。本年度は、印刷製膜プロセスの高度化による積層数・積層様式の自在制御と、層状結晶性をさらに強化する分子開発に取り組んだ。まず用いる分子材料・プロセス条件の高度化、特にアルキル鎖長の異なる2種の有機分子を混合した製膜によって、層形成に対するフラストレーション効果にもとづく単層二分子膜構造の構築に成功した。さらに製膜温度・溶液濃度等の最適化により、6インチシリコンウエハー(10 cm×10 cm)大の単層2分子膜の製膜に成功した。得られた単層二分子膜について、薄膜内の単結晶ドメインの広がりと各々の結晶方位をクロスニコル観察法により確認するとともに、層内の分子配列の様子を詳細な偏光吸収スペクトルを用いて解析し、単層2分子膜内の分子配列構造が、短鎖長の分子によって決定づけられていることを根拠づけた。さらに層状結晶性を保ちながら溶解性・熱安定性を強化する分子材料開発に取り組み、拡張パイ電子骨格を持ち熱安定性に優れた別種の分子において、Ph-BTBT-Cn系と同様なヘリンボーン型二分子膜構造が見られることを明らかにするとともに、2種分子の混合により、BTBT系と全く同様な単層二分子膜構造の構築が可能なことを明らかにした。以上をもとに、単層二分子膜構造の構築が、パイ電子骨格間の強い層内分子間相互作用、脂質二重膜に類似した優れた自己集積性、及び気液界面近傍での層状構造の自己形成を促す溶液プロセスという三つの特徴の相乗効果によって、非常に均質性に優れた超極薄の二分子膜型半導体が得られることが明らかになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は、初年度として印刷製膜プロセスの高度化による積層数・積層様式の自在制御と、層状結晶性をさらに強化する分子開発に取り組み、特に(1)6インチシリコンウエハー大の単層二分子膜の製膜、(2)層内の分子配列構造の決定因子の解明、(3)拡張パイ電子骨格を持つ別種の分子系による単層二分子膜の構築において多大な進展が見られた。研究は当初の計画以上に順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度得られた成果にもとづき、二分子膜を単位とする層状構造の積層数や積層様式を自在に制御する層状分子集積システムの評価と応用展開をさらに進めていく計画である。特に本年度は、超高感度化学センサ―等への応用を念頭におき、分子レベルの表面吸着や化学反応を制御できる究極の機能性人工超薄膜への展開について検討を行う。
|