研究領域 | π造形科学: 電子と構造のダイナミズム制御による新機能創出 |
研究課題/領域番号 |
17H05147
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
村岡 貴博 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70509132)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 芳香族性骨格 / 両親媒性分子 / 生体関連化学 / ポリモルフィズム / 刺激応答性 |
研究実績の概要 |
本研究では交互両親媒性分子構造を基軸とした芳香族性部位を有する分子の2次元(膜)、3次元(結晶)場での動的制御系の構築を目指している。3次元(結晶)場での動的制御系の構築について、短鎖PEGを組込んだ環状マルチブロック分子が熱応答単結晶ー単結晶転移を示し、単結晶のマクロな運動や導電性のスイッチに成功した。その知見を基に、芳香族性部位の構造とPEG鎖の長さが結晶転移に与えるについて調べた。その結果、環状交互両親媒性分子を構成する2つの芳香族性部位が同一でない構造が、熱結晶転移に重要であることを見出した。またPEG鎖の長さは転移温度に影響することが示された。また非環状マルチブロック分子についても合成し、結晶熱応答性を示す結果が見られた。これは当初予想していなかった結果である。非環状マルチブロック分子について、脂質二分子膜中で集合し、超分子イオンチャネルを形成することがこれまでの研究から示されている。その知見に基づき、現在様々な刺激応答性の付与に挑戦している。現在ATP応答性分子と張力応答性分子の開発を進め、主に張力応答性イオンチャネルの開発と機能評価を行った。分子集合を促す芳香族性部位について、嵩高い置換基を導入し集合化を阻害する設計を施したところ、浸透圧によって制御された膜張力に対する応答性が現れ、イオン透過性をスイッチすることを見出した。分子構造によって、張力で透過性を発現するものと、逆に張力で透過性を失活するものをいずれも実現可能であることを実証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交互両親媒性分子構造を基軸とした芳香族性部位を有する分子の3次元(結晶)場での動的制御系の構築について、芳香族性部位の構造とPEG鎖の長さが結晶転移に与えるについて注目し化合物ライブラリーを合成し、その特性を網羅的に解析した。その結果、非対称型の芳香族性構造が熱結晶転移を示す上で重要である点を見出した。さらにPEG鎖の長さに依って転移温度が変化することも確認した。また、当初予想していなかった非環状マルチブロック分子の結晶熱応答性についても興味深い特性を見出した。2次元(膜)場での動的制御系の構築について、膜挿入性非環状マルチブロック分子を基盤とし、張力応答性イオンチャネルの開発に成功し詳細な特性評価を行った。このように、当初の計画にほぼ従う形で研究が進展している。
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今後の研究の推進方策 |
交互両親媒性分子構造を基軸とした芳香族性部位を有する分子の3次元(結晶)場での動的制御系の構築について、環状分子、非環状分子の特性について詳細に解析すると共に、機能化へ結びつける。特に非環状分子の特性については未だ知見に乏しいため、その解明に向け今後特に注力する。2次元(膜)場での動的制御系の構築について、生体が利用している刺激であるATPによるリン酸化反応に応答するイオンチャネルの開発を目指す。リン酸化酵素の反応を受ける分子骨格を付与した膜貫通性分子の開発を行う。
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