研究実績の概要 |
ヨウ素結合を利用した多孔性π電子システムを構築し、それを熱電材料へ応用するため、平成29年度は以下の研究を行った。 (1)ヨウ素結合能を有する4,5-ethylenedioxy-4'-iodotetrathiafulvalene (EDO-TTF-I)からなる(EDO-TTF-I)2ClO4について、PF6、AsF6、SbF6、NO3、C3(CN)5塩と同様にEDO-TTF-I分子がβ'型分子配列をとること、室温付近ではダイマーモット絶縁体と考えられることを明らかにした。またClO4塩は、冷却すると190 Kで格子の2倍化を伴った相転移を示し、金属的挙動を示すこと、さらに95 K以下では、再び半導体的挙動を示すようになり、非磁性化することを明らかにした。新学術領域内で共同研究を実施し、赤外反射スペクトルを測定したところ、ダイマーモット絶縁体に特徴的なバンドが観測され、そのスペクトルの温度依存性は導電挙動を反映したものであった。また、5 Kにおいて放射光を用いたX線構造解析を実施したが、明確な超格子反射を確認することはできなかった。ClO4塩は半金属状態から絶縁化していると考えられ、今後、励起子絶縁体の可能性を検証する。 (2)従来の2,7-diiodo[1]benzothieno[3,2-b][1]benzothiophene(BTBT-I2)の合成法を見直し、文献を参考にして[1]benzothieno[3,2-b][1]benzothiophene(BTBT)を臭素により臭素化することにより2,7-dibromo[1]benzothieno[3,2-b][1]benzothiophene(BTBT-Br2)を得た。また、3,3'''-dihexyl-2,2':5',2'':5'',2'''-quaterthiopheneをNISでヨウ素化することにより、4,4'''-dihexyl-2,2'''-diiodo-5,2':5',2'':5'',5'''-quaterthiophene(DHex-I24T)を得た。さらに電解質として(TBA)PF6を含むTHF溶液中でDHex-I24Tの電解酸化を行ったところ、0.85 eV付近に吸収帯を有する粉末を得た。
|