本研究では、前回参画した公募研究で得た知見を基に、構造的・電子的な「揺らぎ」がintrinsic、dynamic-π機能の鍵となる典型元素含有π電子共役分子を設計・創製することを目的とした。さらに、領域内・外の研究チームとの積極的な共同研究を通じて、外部刺激に 応答して電子受容性や発光色をダイナミックに変化できるelastic- π機能の実現を目指した。 今年度は、前年度に引き続き、代表者がこれまでに独自に開発してきた特異な構造を有する電子アクセプターを活用して、アルブレヒト健(A01班)および山本洋平(A02班)らと共同して開発したデンドリマー型ドナー・アクセプター・ドナー型分子の外部刺激に対する光物性挙動を調査した。その結果、湿度に応じて発色ならびに発光色が大きく変化することを見出した。また、IRやラマン分光測定から、これらがデンドリマー構造の変化に応じて引き起こされていることを示唆する結果を得た。また、以前開発した立体配座変化に応じて多色発光性メカノクロミズムを示す分子の固体状態における光物理過程をポーランドの国際共同研究で明らかにした。時間分解測定の結果、ドナーのアクセプターに対する配座に応じて熱活性化遅延蛍光、室温リン光、その両方、が入れ替わることを見出した。これを応用することで、ホスト材料に分散させた薄膜を調整する際に用いる溶媒の種類によって、配座の分布が変化し、発光挙動が著しく変化することを見出した。さらに、この知見を用いて、塗布プロセスをわずかに変えるだけで、有機ELデバイスの発光色を変調させることにも成功した。
|