公募研究
本年度は、非線形光学材料の実現のため、分子間π-π積層型のチアジルラジカルの1次元多量体について分子集合系構造・スピン状態・開殻性と第二超分極率(γ)の相関を検討し、閉殻系からなる集合系に比べて遥かに大きな非線形光学物性を示すことを明らかにした。この結果を基に一次元マルチラジカル系への具体的な設計指針の構築に成功した。また、同様の系において外部静電場を印加することで、その開殻性や非線形光学物性がどのように変化するかを検討した。以前、非対称開殻理論モデルにおいて予測した、開殻系への非対称性の導入による非線形光学物性の増大が具体的な分子系でも起こることを実証し、外部静電場の強度を変えることで非線形光学物性の制御可能性を示した。さらに、これまで未検討のジラジカルモノマーの積層集合系の特性を解明するため、長方形テトララジカル系の電子状態とγの相関について、新たに定義した局所的開殻性という指標を用いて検討し、その相関を各種物理量に基づいて解明した。その結果、従来知られていなかったγの新たな増大領域を発見し、γを増大させるための新しい具体的な分子設計指針の構築に成功した。これらの成果は、マルチラジカル集合系の非線形光学物質として可能性を広げ、新規の高効率非線形光学材料の創成に役立つと期待される。また、班内/班間の共同研究においては、引き続き、(1)反芳香族分子及び積層系の開殻性、環電流、非線形光学効果(忍久保)、(2)湾曲分子系の開殻性と非線形光学効果(櫻井)を推進した。
1: 当初の計画以上に進展している
具体的な1次元開殻分子集合系トチアジルラジカルからなる系を設計し、その無限サイズの外挿によりマクロな非線形感受率の値を予測できた。さらに、これまで未開拓であったジラジカルモノマーからなるテトララジカル2量体について分子内、分子間ジラジカル因子を新たに定義し、それに基づいた解析を行うことで新規の非線形光学物性の増大領域を見出したため。
曲面パイ共役系と開殻性の相関を幾つかのモデル系を通して多面的(例えば芳香族性や非局在性などの観点から)に検討していく。一方、忍久保、櫻井らとの共同研究により、これらのモデル系の特徴を有する実在系について高精度量子化学計算により計算解析し、我々の理論設計指針の妥当性を検証し、実在系の設計へと展開する。
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すべて 国際共同研究 (6件) 雑誌論文 (16件) (うち国際共著 7件、 査読あり 16件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (55件) (うち国際学会 7件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
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