研究領域 | π造形科学: 電子と構造のダイナミズム制御による新機能創出 |
研究課題/領域番号 |
17H05160
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
清水 宗治 九州大学, 工学研究院, 准教授 (70431492)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 有機π電子系分子 / 芳香族性 / アザポルフィリン / 磁気円偏光二色性スペクトル / 超分子化学 |
研究実績の概要 |
本研究では先行の公募研究の知見を基に、①特異な電子機能を有するアザポルフィリノイドの合成法の開発、②電子機能および運動性を兼ね備えたアザポルフィリノイドの構築と機械的特性を指向した物性研究、③MCD分光法を用いた電子構造解明を重点課題として行い、光吸収特性と構造的特徴から機能性分子材料としてポテンシャルの高いアザポルフィリノイドの化学を展開している。 ①ではポルフィリン骨格の酸素を組み込んだ新規類縁体の合成に成功し、特異な反芳香族性を示すことを見いだしている。本研究では③におけるMCD測定を用いた反芳香族分子の電子構造解明について検討を行ったほか、2電子酸化で生成することが期待される芳香族性ジカチオン種の創出を試みた。 ②では先行研究において、TTFが外部に縮環したサブフタロシアニンが積層構造を構築することを分光学的な手法から見いだしている。今年度はその結晶構造解析に成功し、お椀構造のサブフタロシアニンがπ-スタックにより、同一方向を向いて積層することを明らかにした。また周辺置換基の変換により、溶液状態でもある程度の超分子ワイヤー構造を形成する分子系の合成研究に着手している。 ③では①で合成する新規アザポルフィリノイドに加えて、領域内外で合成された新規π電子系分子のMCD測定を行っており、芳香族あるいは反芳香族性に起因する特異なMCDシグナルの解析により、その電子構造とMCDシグナルとの相関解明を行った。またこれらの知見が蓄積されることで、MCD分光法を用いた芳香族性の解析手法の確立を現在、試みている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
概要に述べたとおり、①では研究計画に述べたアザポルフィリンに加えて、酸素含有ポルフィリン類縁体の合成に成功し、特異な反芳香族性を示すことを見いだしている。この分子の合成法と前駆体は他のπ電子系分子骨格合成にも展開可能であり、新たな分子群の創出が期待できる。また②ではこれまで溶液状態における分光測定においてのみ確認していた積層構造の固体状態での解明に成功している。この分子構造は、側鎖にさらに分子間相互作用を付与することで、より一義的な積層構造の形成を示唆するのものである。以上のことは本研究を遂行する上で大きなブレイクスルーになっていることから、研究全体として、当初計画以上に進展していると評価できる。また③においても十分な知見と解析技術が蓄積されつつあることから、MCD分光法を用いた芳香族性指標の確立に大きく近づいていると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
①においてはこれまでに合成してきたアザポルフィリンおよび、最近、合成に成功した酸素含有ポルフィリン類縁体を基軸に、研究計画通り、さらに合成研究を進める。②についてはある程度、安定な構造体を得た後に、TTF積層構造に起因する伝導特性や主に加圧などによる外部刺激による物性変調について、検討を行う。③においては継続して、本研究で合成される新規π電子系分子に加えて、領域内外のπ電子系分子のMCD測定を通して、知見を蓄積し、MCD分光法を用いた芳香族性指標の確立を試みる。
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