本研究では、「ヘテロ分子集積化技術を基盤としたπ造形光科学の開拓」と題し、有機合成および分子集積化によって調製したπ電子系材料の外部刺激応答性に関する評価を検討した。例えば、ホストーゲスト自己組織化発光材料のピエゾフルオロクロミズム特性を見出したことが挙げられる。ホストーゲスト自己組織化発光材料は、異なる分子間で生じる電荷移動錯体の形成によって固体中で発光特性を示す材料であるが、本研究では、ダイアモンドアンビルセル中に材料を封入し、超高圧下における発光スペクトル測定を実施した。常圧下では、水色発光を示したが、圧力印加にともない発光色のレッドシフトが観測され、8Gaあたりでは赤色発光を示すことが見出された。この発光色変化は外部圧力によって可逆的に見られたことから、化合物の分解や分子集積構造の変化によるものではなく、圧力による電荷移動錯体が圧縮されることに起因するものと考えた。そこで高圧下における単結晶X線構造解析を実施することにより、実際に圧力印加にともなう分子間距離の近接が観測され、その分子座標をもとに分子軌道計算を行い、発光メカニズムの考察を行うことができた。 また有機化合物の蒸気に応答して発光色変化を生じるベイポクロミズム材料の創製を達成した。 その他にもポルフィリンの構造異性体であるポルフィセンに着目し、有機合成化学的な観点から、赤色および近赤外発光を示す新規ポルフィセンの合成に着手した。なかでも3価金属含むポルフィセン金属錯体の1部において、希薄溶液中ではほとんど発光を示さないが、凝集状態において発光強度の増大が見られる、凝集誘起発光を示す材料を見出すことができた。
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