研究領域 | π造形科学: 電子と構造のダイナミズム制御による新機能創出 |
研究課題/領域番号 |
17H05163
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研究機関 | 神奈川大学 |
研究代表者 |
辻 勇人 神奈川大学, 理学部, 教授 (20346050)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 有機化学 / McMurryカップリング / ハフニウム / 曲面π電子系 |
研究実績の概要 |
本研究は、新しい科学技術の創製が期待される物質群として近年急速に注目が集まっている曲がったπ電子系の新たな合成法と機能創発に関するものである。報告者らは以前に、ジ(ベンゾフリル)ケトンという嵩高いケトンのMcMurryカップリング反応によるアルケン合成を試みた際、標準的な反応条件である低原子価チタンを用いた際には全く生成物が得られなかったのに対し、低原子価ハフニウムを用いると中程度の収率でカップリング体が得られることを見出した。本研究では、この反応を他の嵩高いケトン、特に7員環部位をもつトロポン誘導体のMcMurry型カップリングに適用し、非平面アルケンの合成を目指した検討を行った。反応条件検討にはジベンゾスベロンを基質として、低原子価ハフニウムの生成ならびにカップリング、脱酸素の様々な段階についての最適条件を検討した。その結果、塩化ハフニウム1.5当量と還元剤として亜鉛3当量を用い、DME溶媒中で反応を行うことで、収率84%で目的物を得た。この生成物は以前にジベンゾスベロンからBarton-Kellogg法とよばれる多段階合成によって得られることが報告されており、今回ジベンゾスベロンから一段階で得られた点は特筆に値する。また、生成物の構造は既知物質とのNMRスペクトルとの比較より確認し、立体化学はtrans-bent構造であることが示唆された。また、得られたアルケンを酸化条件下におくと、cis-bent構造に異性化することを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
反応条件の最適化により、合成反応としては及第といえる収率を達成している。また、酸化条件(外部刺激)による構造異性化も観測されていることから、概ね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
トリベンゾトロポンなどのπ系が拡張した基質や、トロポン部位を複数個有する基質など、様々なトロポン誘導体を用いたMcMurry型カップリングを検討し、7員環を含む拡張π電子系骨格創製に取り組む。得られた生成物を溶液中や金属表面上でカップリングすることで、曲がったグラフェンナノリボン、環状物質、三次元ネットワーク構造を持つ物質などの新たな物質の創製を目指す。また、得られる曲がったπ電子系骨格の、外部刺激による構造変化についても検討する。特に、機械的刺激もしくは化学反応を用い、バルクスケールでのElasticな変化の発現を目指す。
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