研究領域 | π造形科学: 電子と構造のダイナミズム制御による新機能創出 |
研究課題/領域番号 |
17H05169
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
河東田 道夫 国立研究開発法人理化学研究所, 計算科学研究機構, 研究員 (60390671)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 化学物理 / 超分子化学 / 高分子構造・物性 / 有機π電子系化合物 / 有機半導体 / 有機発光材料 / 有機薄膜太陽電池 / 計算化学シミュレーション |
研究実績の概要 |
平成29年度には、(1)課題実施前に開発した有機分子結晶準安定状態自動探索ソフトウェアに発光スペクトル評価を自動的に行う機能を実装しメカノクロミック分子材料全自動探索システムの構築を行った。 (2)次に本ソフトウェアを用いて第一原理密度汎関数理論(DFT)計算を用いて、林正太郎講師(A02班、防衛大学校)のグループで合成が報告された発光性エラスティック有機結晶のエラスティック特性の評価を行った。現実系にかけられる異方的な外力を掛けた際の相対安定性を計算より評価したところ、結晶軸a軸とc軸方向の異方的な伸長に対して最安定構造からのポテンシャルエネルギー変化が小さいことが明らかとなった。さらに結晶構造を詳細に調べることにより、分子長軸方向にX型に重なった構造の特長を活かし、フッ素原子とメチル基とπ骨格同士の相互作用が保持されることにより、異方的な伸長に対して安定であることが明らかとなった。 また、(3) 共有結合性有機骨格構造体(COF)の3次元高次構造のモデリングソフトウェアの開発を行った。本ソフトウェアの開発により中心骨格、分子鎖、トポロジーのデータベースを用いて仮想的な高次構造を自動生成し、分子力場計算と第一原理DFT計算を用いて準安定なCOF構造を探索することが可能となった。さらに、本ソフトウェアを用い、斎藤雅一教授(A01班、埼玉大学)のグループで合成が報告された硫黄およびセレンを含むボウル型トリカルコゲナスマネンを基本π骨格とするCOFの原子レベルでの構造モデリングを行った。複数の構造モデルを生成し、第一原理DFT計算より相対安定性を評価したところ、S-COFはジグザグ型構造が最安定で、平面型構造が準安定であり、その相対エネルギー差が単位セルあたり1.9kcal/molのため、実際の系ではジグザグ型と平面型の両方の構造が混在することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究計画で立案した、(1)メカノクロミック分子材料全自動探索システムの構築は計画通り完了したが、金イソシアニド錯体の置換基を系統的に変えた際のメカノクロミック評価実験を対象としたシステムの自動探索効率と予測信頼性のテストについては、計算時間が当初の見積もり以上に掛かり過ぎテストを完了することができなかった。一方で、林らの発光性エラスティック有機結晶については、自動探索効率と予測信頼性がある程度評価できるテストを実施することができ、実験事実と矛盾ない最安定構造と複数の準安定構造が探索できることが確認できた。有機結晶のエラスティック機構・メカノクロミック発光機構の解明については、研究開始後新たに立ち上がった領域内共同研究の遂行により、当初計画以上の研究進捗が得られた。そのため、来年度に残りのメカノクロミック発光特性解明のための励起状態計算を進めることにより成果を一通り取りまとめられる目処が立ったため、論文発表などの成果取りまとめを行う計画である。 (2) 共有結合性有機骨格構造体(COF)の3次元高次構造のモデリングソフトウェアの開発と応用については、ソフトウェアが完成し応用計算に活用できるようなったので、当初計画以上の成果が得られている。さらに、本ソフトウェアを用いて、研究開始後新たに立ち上がったトリチアスマネンを含むCOFの原子レベル構造決定の領域内共同研究が想定外に進んだにより、当初計画以上の研究成果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
研究は順調に進み共同研究を含む成果も出始めているので、(1)発光性エラスティック有機結晶の応用については、メカノクロミック分子材料全自動探索システムを用いて発光スペクトルの評価を行うことにより、メカノクロミック機構を明らかにしていく。また、来年度研究計画で立案していた未知メカノクロミック分子材料の探索と機能評価については、計算時間の問題がある含金属錯体を対象とした応用を実施せずに、有機分子結晶を対象として実施するように計画を変更する。(2)の共有結合性有機骨格構造体(COF)の3次元高次構造のモデリングソフトウェアについては、準安定状態自動探索機能とホール・電子移動度機能を追加することにより、構造探索と機能評価を自動で行えるようにソフトウェアの開発を行う。開発完了後は、中心骨格、分子鎖、トポロジーのデータベースを対象に、未知COF材料の探索評価を行う。
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