昨年度に続き,本課題では3つの研究項目,(A) 材料設計・合成,(B) π電子系を持つ分子によるナノ単結晶形成条件の検討,(C) 構造・物性・特性評価に従い研究展開した。 (A) 材料設計・合成:30年度は前年度の結果を基に,各種ドナー・アクセプタの中から最適な電子構造を持つ材料を選び出し,微小単結晶作製に用いたところ,スイッチング挙動を示すナノ材料を電極間に作製することに成功した。このスイッチング挙動のゲート電圧依存性を調べた。また,その他の結晶では電解時に結晶中に取り込まれた対成分・ イオンの動的効果によると考えられる物性変調が見られた。 磁気機能デバイスでは,これまで実績のある中心金属がスピンを持つ金属錯体類(フタロシアニン類等)を適用し,ナノ単結晶の成長を確認した。一方,領域関係者との共同研究として,新しいπ電子系分子材料にナノ電解法を適用したところ,新規ナノ単結晶の作製に成功した。 (B) π電子系を持つ分子によるナノ単結晶形成条件の検討:昨年度に続き,2電極間のギャップへのナノ単結晶の選択的作製を行い,位置選択型作製条件を検討した。本年度は基板上に5 μm間隔のギャップ電極を用いた。基礎特性評価のため,前項で設計・合成あるいは選択した材料についてナノ電解法の交流での電解を適用し,ナノ単結晶による架橋構造を形成させるのに最適な電解条件を検討した。一方,直流での電解によるナノ単結晶の平面均質型作製を試み,一様な成長が見られることが分かった。 (C) 構造・物性・特性評価:本年度も前項目で得られたナノ単結晶について,構造と基礎特性評価を行った。得られた結晶について電流-電圧特性等の評価を行い,基礎特性を明らかにした。一部の材料ではスイッチング挙動を見出した。また,新たなナノ材料への展開を検討するため,可溶性ペロブスカイト材料の電子特性評価についても特性評価を行った。
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