公募研究
現代物理学の大きな謎のひとつである、暗黒物質の検出をめざした新しい検出器の開発を行っている。ここでは、放射線などの目には見えない光ないしは粒子を、光検出器で検出可能な紫外線や可視光に変換することができる、シンチレータを利用して、放射線と同様に暗黒物質の「見える化」に取り組んでいる。これまでのシンチレータの常識は、放射線の入射に対して発光量は放射線のエネルギーに大きく依存するというものであったが、われわれは、入射する方向にも依存するという、まったく新しいシンチレータ材料の開発を行っている。この新規(新奇)材料が高い発光量を持ち、具現化されれれば、暗黒物質探査にとっては非常に大きなインパクトがある。というのも、太陽系が白鳥座の方向に向かって銀河系内を円周運動しているため、銀河に付随していると考えられる暗黒物質は白鳥座の方向から「風」となって吹いてくると考えられているためである。暗黒物質とそうでないノイズとの切り分けのためにも、方向感度を持つことは非常に大きな利点となる。そのため、方向感度を持つシンチレータの開発は、これまでのシンチレータを用いた暗黒物質探査に比べて、非常に大きな感度を得ることができ、より探索しやすいことが期待できる。具体的には、ZnWO4(以下、ZWO)結晶および、ZWOに似た結晶構造、ZWOと同様の発光機構を持つ材料の結晶育成をチョクラルスキー法を用いて行った。そして、発光の方向依存性について、特にZWOで確認することができた。なお、発光量の方向感度依存性を見る際には、測定のばらつきなどのエラーの評価が重要であり、今年度は複数のZWOサンプルについて、複数回の実験を測定し、発光量が結晶の方向によって異なることを確認した。このことから、ZWOは新しい暗黒物質探査のツール・素子になることが期待できることが、分かった。
1: 当初の計画以上に進展している
結晶育成や現象論的な光学特性の変化について確認したのみならず、いくつかのタングステン酸塩の光学特性評価に取り組んでおり、なぜ方向によって発光が異なるかという理由について、一定の系統的な議論ができつつあるため。
暗黒物質は電荷を持っていない粒子であるので、同様に電荷を持たない粒子である中性子を暗黒物質に見立てて、シンチレータに入射させたときの発光量などについての評価を行ってゆく。同様に、方向のそろったビーム(電子、宇宙線等)による光学特性応答の試験も遂行してゆく。
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すべて 国際共同研究 (2件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
http://yoshikawa-lab.imr.tohoku.ac.jp/personal/kurosawa/index.html