研究領域 | 宇宙の歴史をひもとく地下素粒子原子核研究 |
研究課題/領域番号 |
17H05194
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
日野原 伸生 筑波大学, 計算科学研究センター, 助教 (80511435)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 二重ベータ崩壊 / 原子核構造 / 生成座標法 |
研究実績の概要 |
48Caの二重ベータ崩壊の原子核行列要素計算を実行可能とするため、生成座標法のコードの改良を行った。48Caは二重閉殻であるため、準粒子波動関数からなる行列の逆行列を用いる生成座標法の従来の重なり積分の計算手法はゼロ固有値が存在することから使うことができないが、閉殻であっても重なり積分の計算ができるようにした。これを用いて48Caの生成座標法計算を実行し、中性子―陽子対相関の効果を調べた。殻模型計算では中性子―陽子対相関が二重ベータ崩壊の原子核行列要素を抑制する結果が得られているが、中性子―陽子対振幅の自由度のみを入れた生成座標法計算では抑制は限定的であった。これは当初予想していた結果と異なるため、今後は四重極変形等の他の自由度を導入しつつ、48Caでの原子核行列要素の抑制のメカニズムを明らかにしてゆく。 また、原子核密度汎関数理論の線形応答計算を効率的に行う有限振幅法を、二重ベータ崩壊の原子核行列要素に用いる方法を定式化した。この定式化によって、複素エネルギー面での二重複素積分を実行することで、準粒子乱雑位相近似の原子核行列要素を、従来の行列対角化の手法と比べて効率的に計算することが可能となる。原子核密度汎関数の計算コードHFBTHOへのこの実装に着手しており、この定式化を用いることで特にニュートリノを2つ放出する二重ベータ崩壊の原子核行列要素を効率的に計算することができ、二重ベータ崩壊に影響を与える原子核密度汎関数の結合定数の決定のような、原子核行列要素を繰り返し計算する場合に有用となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
生成座標法の計算については48Caの計算をまだ完了しておらず、やや遅れているが、当初予想していなかった、準粒子乱雑位相近似の計算手法に関する新しい発見があった。この手法は今後原子核行列要素を原子核密度汎関数理論を用いて計算する上で非常に強力な手法となることが期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
48Caの計算・分析を完了した後に、136Xeなどの重い質量領域の原子核での二重ベータ崩壊の原子核行列要素を生成座標法を用いて行う。また、有限振幅法による準粒子乱雑位相近似のコード開発を行い、二重ガモフテラー遷移や2つのニュートリノを放出する二重ベータ崩壊の原子核密度汎関数法による計算を実行してゆく。
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