二重ベータ崩壊原子核行列要素の不定性の主要な要因の一つとなっている中性子ー陽子対相関の決定に向け、2017年度に定式化した、有限振幅法による準粒子乱雑位相近似計算のコード開発を行った。実装は軸対称変形が取り扱える原子核密度汎関数法計算コードHFBTHOと、米国ノースカロライナ大学で開発された中性子ー陽子チャネルの線形応答計算の有限振幅法コードをもとに行った。この方法によって準粒子乱雑位相近似の従来の解法である大次元行列対角化を行うことなく、原子核行列要素を並列化が可能な複素エネルギー面での二重積分によって、効率的に計算することが可能となった。 まずは小さいサイズの調和振動子基底の一粒子模型空間を設定し、48Caを含むpf殻原子核で二重複素積分によって池田和則を計算し、コードのチェックを行った。続いて基底状態間の二重ガモフテラー遷移強度およびニュートリノを2つ放出する二重ベータ崩壊の原子核行列要素計算を、アイソベクトルおよびアイソスカラーの中性子ー陽子対相関の強度を変えながら系統的に行い、中性子ー陽子対相関の結合定数依存性の分析を行った。アイソベクトル型中性子ー陽子対相関によってフェルミ型の原子核行列要素が抑制され、アイソスカラー中性子ー陽子対相関によってガモフ・テラー型の原子核行列要素の抑制が系統的に見られた。今後模型空間を大きくし、様々な原子核密度汎関数を用いた計算を系統的に行うことで、二重ベータ崩壊の実験値を大域的に再現する中性子ー陽子対相関の結合定数の決定を行うことが可能となった。
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