研究領域 | 宇宙の歴史をひもとく地下素粒子原子核研究 |
研究課題/領域番号 |
17H05202
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
矢野 孝臣 東京大学, 宇宙線研究所, 特任助教 (70437341)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | ニュートリノ / GPU / 超新星 / 水チェレンコフ検出器 / リコンストラクション |
研究実績の概要 |
本研究では科学計算に用いられるコンピュータ計算資源のうち、近年計算能力の向上が著しいGPU(Graphic Processing Units)と既存の計算資源であるCPU(Central Processing Unit)を併用したヘテロジニアスコンピューティングによって、大型水チェレンコフ検出器の為の事象再構成アルゴリズムを構築することを目的とする。 大型水チェレンコフ検出器としては、日本国内で行われているスーパーカミオカンデ実験およびその次世代計画ハイパーカミオカンデ実験が著名である。本研究ではまた、これら実験の重要な研究対象である超新星爆発ニュートリノ事象観測について、事象再構成の高速化・高度化を目指す。 平成29年度の研究により、申請者らはGPUを用いた事象再構成アルゴリズムのプロトタイプを作成することに成功した。本アルゴリズムは現在上記水チェレンコフ実験で用いられているアルゴリズムよりも高速に動作する。しかしながら事象位置の再構成の精度においては劣る。この点については今後のアルゴリズムの改良により改善が見込まれる。また海外グループとの協力により、汎用水チェレンコフ検出器シミュレーションWCSimと超新星爆発ニュートリノモデルを組み合わせた超新星爆発ニュートリノの検出シミュレーションデータが完成しつつある。 計画の二年目である平成30年度においては、これらを用いてアルゴリズムの改善及び性能評価を進める予定である。素粒子物理学分野において水チェレンコフ検出器にヘGPUとCPUを組み合わせたテロジニアスコンピューティングを応用する試みは本研究が初であり、今後の発展が期待される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、申請者らは平成29年度内にヘテロジニアスコンピューティングによる事象再構成アルゴリズムのプロトタイプの構築に成功した。また汎用水チェレンコフ検出器シミュレータWCSimを併用することで、この事象再構成アルゴリズムの性能評価を行い、本公募の新学術領域D01班主催の研究会・日本物理学会で成果発表を行った。アルゴリズム構築に用いる言語としては、プログラミングの容易さおよび資料の入手性を考慮し、当初予定していたC++/OpenCLからC++/CUDAに変更を行った。 また、超新星爆発の計算モデルとWCSimを組み合わせた事象検出のシミュレーションデータについても、海外グループの協力により完成しつつある。これは当初の計画では平成29年度内の完成を予定していたものである。 上記の状況を鑑み、本研究は概ね順調に進展していると判断する。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究は概ね当初の予定通り順調に進展している。平成30年度においては引き続き事象再構成アルゴリズムの特性の確認、改善及び性能評価を進める予定である。 性能評価には超新星爆発事象検出のシミュレーションデータを用いる予定であるが、事象再構成の高速性、時間的・空間的に隣接した事象の分離性などに着目し、より簡便なデータセットにより評価を行うことを検討する。
|