公募研究
最終年度である2018年度は、昨年度に引き続き「高感度2相型Ar光検出器」の開発構築を行った。我々の研究成果により、液体中の電場を上げるとS2/S1によるER事象除去力は向上するものの、低エネルギーでの消光が強く、総合的な除去力は改善しないことが判明した(2本の学術論文を投稿済)。そこで①抜本的な光量最大化、②S2の電場依存性の精密測定と最適化の2点に焦点を当てた。①に関しては、波長変換材TPBの真空蒸着システムの改善と安定化を行ったうえで、蒸着最適量を算出し、PMTを用いて液体Ar中での検出光量を測定した。その結果、世界最大光量である約12pe/keVeeを得ることができた。また、低エネルギー領域での応答を精査するため、中性子とFの散乱由来のγ線や241Amからのγ線を検出器較正に用いることに成功した。さらなる光量増加のため、PDEがPMTの倍ある最新のTSV-MPPCの利用を検討、極低温でも問題なく稼働できることを実証した。今後、20pe/keVee以上を達成する目途をつけることができたことは極めて貴重な成果といえる。②に関してもこれまで先行研究がなかった高電場(3kV/cm)までの応答をモデル化(S1とS2同時フィット)することができた。また関数を外挿することで、低エネルギー領域(10keVnr領域)での消光因子を体系的に算出することに世界で初めて成功した(PRDに投稿済)。また、液体シンチレータを用いた神岡地下施設での環境中性子測定も2年にわたり続けている。2018年度は、とくに内部放射線を削減した測定系を構築し、ノイズが小さい環境でのデータ取得を新たに開始した。総括すると、Ar応答が想定とは異なる困難があったものの、検出器開発、Ar応答特性の精査、探索感度評価等、多くの学術的な成果をあげることができた。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2019 2018 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (14件) (うち国際学会 3件、 招待講演 5件) 備考 (1件)
Arxiv (submitted to PRD)
巻: 1902 ページ: 1902.01501
早稲田大学博士学位論文
巻: 2019 ページ: n/a
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research Section A: Accelerators, Spectrometers, Detectors and Associated Equipment
巻: 910 ページ: 22~25
10.1016/j.nima.2018.09.019
Progress of Theoretical and Experimental Physics
巻: 12 ページ: 123C01
10.1093/ptep/pty133
www.kylab.sci.waseda.ac.jp