公募研究
永久磁石や発光材料に用いられる希土類元素における不対4f電子は、原子に束縛された局在電子状態にあり、電子スピンと軌道角運動量が結合して磁化や結晶電場エネルギー準位が観測される。一方、結晶格子の対称性によっては、磁化を持たない量子状態も許され、高次テンソルで表される電気/磁気多極子が固有状態として活性となりうる。さらに、f電子が伝導電子と混成して物質中を伝導する遍歴性を帯びる近藤効果も知られており、その場合キャリアーの有効質量は重くなる。さらに、電子軌道の混成によって形成されるバンドギャップによる近藤半導体や近藤半金属が生じる。本研究では、構造不安定性を伴う電子秩序相転移や、カイラル(対掌)構造相転移を示す近藤半金属における異常磁性を対象とした電子物性研究を目指し、さらにそれらへの元素置換効果を含めて、主にX線と中性子の散乱実験によって研究した。具体的には以下の研究成果を得た。(1) Ce3Ru4Sn13は重い電子系物質と提案されたが、通常金属と異なる低温での電気抵抗と磁気比熱が報告されていた。本研究での装置整備によって独自に合成した試料を用いたX線と中性子の散乱実験により、3次元の比較的等方的な結晶構造であるにも関わらず、Ceイオン間に1次元反強磁性相関が発達する現象を初めて明らかにした。(2) Yb3Ir4Ge13は少数キャリアー近藤効果がはたらく半金属物質とされる。これを提唱した米国グループから提供された試料の中性子散乱実験により、本物質が反強磁気転移臨界点の近傍にある常磁性金属であり、そこでのスピンゆらぎが少数キャリアーを散乱すると考えられる結果を得た。(3) 三元希土類化合物に対する放射光蛍光X線ホログラフィー測定のフィージビリティースタディーを行った。さらに磁性や超伝導状態での局所構造解明に向けた低温における測定法を共同研究により構築した。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 1件、 査読あり 6件) 学会発表 (5件) 備考 (1件)
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