研究領域 | 3D活性サイト科学 |
研究課題/領域番号 |
17H05212
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
吉信 淳 東京大学, 物性研究所, 教授 (50202403)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | プラチナ / グラフェン / 担持 / 光電子分光 / 有機FET / 移動度 |
研究実績の概要 |
(1)北海道大学・郷原研究室で作製されたグラフェン担持Pt単原子、2次元Ptクラスター、3次元Pt微粒子を高分解能内殻光電子分光(XPS)で評価した。大気中から光電子分光システムに導入したそのままの状態と、真空中で500℃に加熱後の状態のPt4fピークを比較した。加熱後にそれぞれのサンプルを取り出し、郷原研究室の透過電子顕微鏡(TEM)で観察した。その結果、500℃の加熱によりPt単原子はPt単原子と2次元Ptクラスターに、3次元Pt微粒子はシンタリングによりPt薄膜になっていることがTEM観察により明らかになった。500℃加熱後のXPSスペクトルでは、Pt単原子に由来するPt4f(7/2)ピークは72.1eV、Ptクラスターに由来するピークは71.8eV、Pt薄膜(バルク)に由来するピークは70.9eVに観測された。500℃加熱後、Ptは還元されていると考えられる。 (2)液体金属GaInを金属探針先端に付着させた独立駆動4探針電気伝導測定装置を用いて、Si酸化膜基板表面に蒸着したペンタセン単分子膜および多層膜のFET特性を測定した。さらに、酸素、窒素、アルゴンをペンタセン単分子層および多層膜に曝露してFET特性の変化を観測した。その結果、ペンタセン単分子層FET特性は、気体曝露に非常に敏感で、いずれの場合も移動度が低下することがわかった。高分解能内殻光電子分光および原子間力顕微鏡観察の結果から、移動度減少の原因は、単分子層アイランドの境界にトラップされた分子による効果であると考えている。 (3)奈良先端大・山田研究室で合成されたエチニレン架橋ペンタセンダイマー結晶のFET特性を独立駆動4探針電気伝導測定装置により測定し、移動度を見積もった。 (4)SPring-8の準大気圧XPS装置を用いて、Pd合金の水素吸着・吸蔵・脱離に伴う表面組成および電子状態の変化を観測した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新学術領域「3D活性サイト」の計画班グループとの共同研究が順調に進展し、その一部は学術雑誌に発表済みあるいは投稿中である。これらの研究は、KEK-PFのBL13Bにおける高分解能内殻光電子分光、物性研究所吉信研究室の独立駆動4探針電気伝導測定装置を用いて実験を行って来た。 SPring-8の準大気圧XPS装置を用いて、Pd合金の水素吸着・吸蔵・脱離に伴う電子状態変化を観察し、実験結果の解析と考察を行っていいる。 一方、透過赤外吸収分光をもちいたグラフェン担持Pt単原子およびPtクラスターへのCO吸着実験については、サンプルの改良を行いながら測定システムの最適化を行っているところである。
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今後の研究の推進方策 |
(1)郷原研究室で作製されたグラフェンに担持された金属単原子、2次元金属クラスター、3次元金属微粒子の化学状態と吸着特性を準大気圧XPS装置や透過赤外吸収分光によって明らかにする。 (2)良く規定されたステップをもつ金属表面の電子状態と分子吸着状態の解明:金属表面のステップは様々な触媒反応の活性サ イトとして知られている。Zn/Cu(997)の局所状態をLT-STMと高分解能XPSを用いて研究する。 (3)PdCu合金やPdAg合金膜を用いて、金属膜裏面で解離し透過した水素と合金表面に吸着した分子種との反応を研究する。XPSにより表面と分子種の電子状態を、質量分析計で脱離種の同定を行う。 (4)PdをCu基板に微小量蒸着すると、Cuの触媒活性を残したまま水素分子の解離能を格段に向上させた単原子合金モデル触媒を作製することができる。このモデル触媒を用いてCu表面に吸着した基質吸着種の水素化反応を研究する。
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