公募研究
本課題では、遷移金属酸化物中の磁気異方性などの磁気特性を、ヘテロ界面構造を介して制御することを目的としている。この目的のためには、ヘテロ界面を原子レベルでデザインすることが重要になる。これまでのRu酸化物薄膜に対する放射光X線回折の結果からは、薄膜中の「遷移金属-酸素結合」はストレインに強く依存すること、さらには「遷移金属-酸素結合」は薄膜の有する磁気異方性と相関することを明らかにしてきた。特にデバイス応用上重要な垂直磁気異方性の安定化には、圧縮ストレインを利用して格子歪み(酸素八面体の変形や回転)を導入することが有用であることが明らかとなってきた。この知見は、他の3d遷移金属酸化物に対しても垂直磁気異方性を導入する際に有用な知見である。そこで、遍歴強磁性体であるCoペロブスカイト酸化物に着目し、圧縮ストレインを印加することで、垂直磁気異方性の付与を試みた。パルスレーザー堆積法によって圧縮ストレイン下でL薄膜試料をエピタキシャル成長させた。磁化測定および磁気輸送特性の評価から、垂直磁気薄膜に特有の振舞い(例えば磁場掃引方向に対してヒステリシスを伴う異常ホール効果)を確認した。また引張ストレインを印加した薄膜においては面内磁気異方性を有していた。つまり圧縮ストレインによって誘起される格子歪み(CoO6酸素八面体の歪み)が垂直磁気異方性の安定化に重要な役割を果たしていることわかる。また放射光X線CTR散乱測定を利用した構造解析から、CoO6酸素八面体(またはCo-O結合)が面直方向に伸張し、面内方向に圧縮されていることを明らかにし、この格子歪みが垂直磁気異方性と相関していることを同定した。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (3件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 3件)
Journal of Applied Physics
巻: 123 ページ: 235303~235303
10.1063/1.5036748
physica status solidi (b)
巻: 255 ページ: 1800175~1800175
10.1002/pssb.201800175
Physical Review B
巻: 98 ページ: 180408~180408
10.1103/PhysRevB.98.180408