研究領域 | 3D活性サイト科学 |
研究課題/領域番号 |
17H05219
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
梅名 泰史 岡山大学, 異分野基礎科学研究所, 特別契約職員(准教授) (10468267)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 蛍光X線ホログラフィー / 光化学系II蛋白質 / 蛋白質結晶 / Mn4Caクラスター / 価数 |
研究実績の概要 |
光合成の酸素発生は光化学系II蛋白質(PSII)の活性中心Mn4CaO5クラスター(Mnクラスター)が触媒する水分解によるものである。MnクラスターはIV価とIII価の混合原子価状態で存在しており、PSIIの光化学反応に伴う色素分子の電荷分離によって酸化力が高められ,水分解によって電子を補充している。本研究では,PSII結晶を使った蛍光X線ホログラフィー法(XFH)によってMnクラスターの分子構造を復元すると共に、4つのMnの価数と反応による各Mn原子の価数変化を明らかにすることを目的とする。 本研究を初めたところ、結晶内に合計32個のMnが存在するため、分子構造を復元することは不可能であることがシミュレーションから明らかになった。そのため、各Mnの価数と価数変化に注力して研究を進めた。XFHの測定では、液体窒素の低温固定した好熱性らん藻由来PSII結晶を調製し,放射光施設SPring-8のBL39XUビームラインを利用して,MnのK-吸収端(6.555keV)から価数の違いに関する情報、吸収端の前後(6.565kEV, 6.551keV)からMnの位置の情報とバックグランドを測定した。測定には2次元検出器を使い,限られて領域のホログラム像を結晶の対称操作で拡張した。また、PSII結晶を532nmのNd:YAGレーザーで1段階励起してフラッシュ凍結した試料も調製し,XFHによる価数変化の比較の測定も行った.本期間では2回のBL39XUの実験を行い、X線損傷の問題から20個程度の結晶に分散してXFHデータの収集をそれぞれ行った。それぞれのデータについて現在共同研究者と共に解析中であるが、Mn由来のホログラム像のパターンが十分に確認されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PSII結晶からMnクラスターの価数と配置に関する情報が得られる3つの波長からXFH測定を順調に行うことができたため。また、XFH測定で懸念されていたX線還元について、照射点を移動しながら測定することにより、還元が抑えられていることがX線吸収スペクトルの比較から検証することができた。また、1段階励起の状態についても、XFH測定に用いたPSII結晶のX線吸収スペクトルから、MnのK-吸収端が0.7eV程度の高エネルギー側へのシフトしていることが確認されたことから、励起手法についても問題が無いことがわかった。これらから、おおむね順調に研究を遂行できていると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
現段階ではまだ測定範囲が狭いため有意な解釈および解析ができない.PSII結晶を多様な方位に配向した状態に向けた凍結結晶の調製方法を検討する。引き続き放射光施設SPring-8のBL39XUビームラインでの測定を行い、測定領域を広げてデータの拡張を目指す。領域研究の共同研究者と共に、Mnクラスターのシミュレーションのホログラム像との比較からMnクラスターの個々の価数と1段階目の遷移で励起されるMn原子の特定を目指す。
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