公募研究
光合成の水分解・酸素発生反応を担う光化学系II蛋白質(PSII)には、活性中心にMn4Caクラスターが触媒中心として存在する。Mn4Caクラスターは価数が異なるMnで構成される混合原子価状態であることが知られているが、各Mnの価数はまだ未解決である。また、反応サイクルにおいて、4つのMnのうちで酸化還元を行っているMnを特定することも課題となっている。本研究では、散乱X線を3次元的に計測してホログラフィーによる像再生を行うことで、金属間の位置情報と価数情報を解析する蛍光X線ホログラフィー法により、Mn4Caクラスターの個々のMnの位置と価数の分析を行い、励起前後の比較から、酸化還元反応を行うMnを特定する研究である。これまで、蛍光X線ホログラフィーは金属合金結晶や低分子の金属錯体結晶等を対象としていたが、本研究期間により、生体試料の高分子量蛋白質結晶であるPSIIも実験対象とすることができた。また、X線損傷に鋭敏なPSIIを自然状態で測定するための、ラスタースキャンによるノーマルモードでの測定条件を開発し、X線による還元作用を受けずにデータ収集を行うことができた。これまでの測定により、PSII結晶のMn4Caクラスターに由来するホログラムパターンを得ることに成功した。また1段階遷移試料で同様の測定を行い、遷移による違いを確認できるホログラムパターンも得ることができた。生体試料の成果はミオグロビンなど僅かな例しか報告されていない。PSII結晶のMn4Caクラスターの構造情報から計算されるシミュレーションのホログラムと実験結果の比較から、Mn4CaクラスターのMn1に対応する部分に差異が確認されたことから、Mn1が酸化還元に関与している可能性が示唆された。しかし、まだ、金属合金等の蛍光X線ホログラフィー分析と比較すると、信頼性が劣るため、精度の点で課題が残っている。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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