研究領域 | 3D活性サイト科学 |
研究課題/領域番号 |
17H05220
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
横谷 尚睦 岡山大学, 異分野基礎科学研究所, 教授 (90311646)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ドーパント局所構造 / 光電子ホログラフィー / ダイヤモンド超伝導体 |
研究実績の概要 |
高濃度不純物ドープ半導体においては孤立して置換型以外に導入されるドープ原子数が増加する。これらの化学状態の理解は試料の物性発現の理解や物性の向上・制御には不可欠である。本研究課題において我々は、高濃度ホウ素ドープダイヤモンドの超伝導転移温度(Tc)の向上を目指し、高分解能光電子ホログラフィー実験により高濃度ホウ素ドープダイヤモンド超伝導体において、金属性/超伝導性を担う「活性サイト」およびキャリヤー導入を阻む「不活性サイト」周辺の局所構造を実験的に解明することを目的として研究を行う。 本年度後期にSPring-8 BL25SUにおいて、手法班A02の室氏、木下氏の協力のもと、高濃度ホウ素ドープダイヤモンドの光電子ホログラフィー実験を行った。実験に用いた試料のホウ素濃度は8×10^21 cm^(-3)と見積もられており、Tcは6 Kである。測定したホウ素1sおよびC1sの内殻光電子スペクトルに対してピークフィッティング解析により化学状態を分離し、それぞれの化学状態に対して光電子ホログラムを作成することに成功した。化学状態を分離したB1s光電子ホログラムはどれもよく似ていることがわかった。またそのパターンは、C1sの光電子ホログラムパターンとも似ていることがわかった。これらの結果は、ホウ素原子が化学サイトの違いにかかわらず置換サイトに近い位置に導入されることを示す。今後、得られたホログラムから像再生を行うとともに、予測されている局所構造に対する光電子ホログラムのシミュレーションとも比較することにより、各化学サイトの局所構造を明らかにする。 関連物質として高濃度リンドープダイヤモンドの光電子ホログラフィー実験の解析を進め、二つのバルクサイトの一方が置換位置に導入されたリン原子のサイトであることを見出すとともに、もう一方のサイトがリン原子と欠陥の複合体である可能性が高いことを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
高濃度ホウ素ドープダイヤモンドについて高分解能光電子ホログラフィー実験を行うことができた。また、その結果から光電子ホログラムの作成にも成功し、局所構造についての情報が得られ始めている。加えて、関連物質として研究を行っている高濃度リンドープダイヤモンドのリン原子周辺の局所構造についても、他の手法では得ることのできない情報が得られ始めている。これらの理由から、当初の計画以上に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は昨年度の研究を進展させ、濃度の異なる高濃度ホウ素ドープダイヤモンドについて高分解能光電子ホログラフィー実験を行うとともにその解析を進める。これにより、金属性/超伝導性を担う「活性サイト」およびキャリヤー導入を阻む「不活性サイト」周辺の局所構造の実験的解明を目指す。
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