研究領域 | 3D活性サイト科学 |
研究課題/領域番号 |
17H05226
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
加藤 有香子 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 主任研究員 (90509837)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ダイヤモンド / 活性サイト / 光電子回折 / 電子デバイス |
研究実績の概要 |
本研究では、電子デバイスへの応用を目指して、p型特性を示すボロンドープダイヤモンドのドーパントの活性サイトに着目している。デバイス作成時には各層の電動特性制御が重要である。ただし、ドーパントの活性化率が100%でなく、また、高濃度領域ではバンド伝導の他にホッピング伝導が現れることから、ボロンドープダイヤモンドの電気特性は、ボロンの添加量からの単純計算から得られず、蓄積した実験データから適当なボロン濃度を選択しているのが現状である。そこで、アクセプタを供給するボロン(活性化ボロン)の化学結合状態を明らかにするために、ボロンドープダイヤモンド中のボロン周辺の原子配列の解析を試みた。 今回は、試料として高濃度ボロンドープCVDダイヤモンド(CVDダイヤモンド)と高温高圧合成法により作成されたボロンドープダイヤモンド(HPHTダイヤモンド)を用意した。ボロン濃度はそれぞれ、2.7×10^20 /cm3、5×10^19 /cm3である。 光電子強度はその試料の原子配列と結晶方位すなわち光電子の放出角度に依存するので、CVDダイヤモンドのB1sスペクトルの放出角度依存性を確認したところ、ボロンには2種類の化学状態があり、そのうち低結合エネルギー成分には放出角度依存性があるが高結合エネルギー成分には放出角度依存性がなく、それぞれ置換サイトに配置されて活性状態にあるボロンと活性状態にはないボロンの存在を示唆する結果が得られた。さらに、CVDダイヤモンドとHPHTダイヤモンドのB1sからの光電子の放出角度依存性を比較したところ、HPHTダイヤモンドは、CVDダイヤモンドと比べて高結合エネルギー成分が少なく、また結合エネルギーもより低いことが明らかになった。このことは、HPHTダイヤモンド中のドーパントサイトがCVDダイヤモンドと異なることを示唆するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
合成条件によって、活性/非活性サイトのパーセンテージに違いがあることを示唆するデータが得られた。H30年度の研究において、電子デバイスにとって最適な合成手法を模索していくなかでの重要な指針となる。
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今後の研究の推進方策 |
今回得られたデータを元に、2種類のボロンのうち、活性化ボロン率が高くなる合成方法・合成手法を模索していく。これにより、目的に即した電気特性を有するボロンドープダイヤモンド合成が容易になることが期待される。
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