研究領域 | 冥王代生命学の創成 |
研究課題/領域番号 |
17H05233
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
藤枝 伸宇 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (00452318)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ナノザイム / アミロイド触媒 / 自己集積ペプチド / 化学進化 |
研究実績の概要 |
Stage Iについては原始ACS (CO-methylating acetyl-CoA synthase)の設計と合成を行ってきた。いわゆるAクラスターとCクラスターを再現するため、トリペプチド錯体の合成に着手した。Aクラスターでは鉄硫黄クラスターに結合したホモ二核のニッケル中心、もしくはヘテロ二核銅、ニッケル中心が活性部位と提唱されている。この活性中心を模倣するため、鉄硫黄クラスター部位には黄鉄鉱を用い、ペプチド(Cys-Gly-Cys)を配位子としたニッケル二核錯体をハイブリッドする方法と黄銅鉱に対してペプチド(Cys-Gly-Cys)を配位子としたニッケル単核錯体を錯化手法の二通りを提案した。すでにトリペプチドとニッケルの錯体を合成し、質量分析で特製評価を行なったところ、期待した値と一致した。またCys-Gly-Hisのトリペプチド合成により、Cクラスターの鉄錯体合成に取り掛かった。 Stage IIについては、βアミロイドタンパク質に見られるコア配列(KLVFFA)のN末端にHisを配置した8残基のペプチド(HKLVFFAV)を用いるとアミロイド形成が見られた。この形成は円二色性スペクトルや電子顕微鏡によって詳細に特性評価を行なった。さらにはマイケル付加反応等のC-C結合形成反応を加速することが明らかとなり、L-アミノ酸のみで合成したペプチド自己集積体は立体選択性を示した。一方で、N末端のみD-アミノ酸で合成したペプチド自己集積体はL-アミノ酸の場合と選択性が反転し、非常に短いペプチドでも選択性が現れることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度、アミノ酸からタンパク質の化学進化をStage I(2-4aa), II(ca. 10aa), III(protein)に分け、特にStage IとIIに対して、それぞれ金属との相互作用、錯体の触媒作用を検討し、計画を進展させる。不溶性のオリゴペプチドの凝集体と可溶性の短いペプチドおよびβ-sheetタンパク質それぞれに対してさらに広範囲に検索を行う。不溶性のオリゴペプチドの凝集体と可溶性の短いペプチドおよびβ-sheetタンパク質を調整し、各種分光分析を行う。ペプチド合成に用いるアミノ酸についてD体とL体の両者から合成したペプチドを用いて、その立体選択性の発現機構にアプローチする。本年度の予定を記述したがこの計画通り、二つのステージについて成果が得られている状況である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、ペプチドが本質的に持っている凝集特性及びその金属配位能に着目し、触媒活性や反応場としての機能性解明から、ペプチドや簡単なタンパク質をベースとする初期段階生命の形状や機能にアプローチし、当該領域がめざす「冥王代生命学」に新たな切り口を提案する。特に申請者は冥王代において比較的簡単に合成される小さなペプチドと金属イオンの接合による錯体触媒の存在が科学進化を大きく前進させたと考える。さらにはペプチド凝集の、集合界面において、いがた効果や集合したペプチド同士間での近接効果が現れるのではないかと仮定し、ペプチドの自己複製機能の証明に挑戦する。このように、本年度達成された結果をもとに次年度はさらに計画を進展させる。グランガイトなどの鉱物と合成した鉄及びニッケルペプチド錯体をコングし、様々な反応性を評価する。不溶性のオリゴペプチドの凝集体と可溶性の短いペプチドおよびβ-sheetタンパク質それぞれに対してさらに広範囲に検索を行う。それぞれの金属錯体のCO2, HCOOHの還元反応、CO2の水和反応やH2Oの光酸化反応など小分子の活性化反応にも挑戦し、立体選択性を比較しながら最小単位の古代金属酵素復元を目指す。鋳型効果(配列の再現性)を比較し、自己複製能の可否を判別する。これらに加えて、乳酸やアラニン(Ala)を例に取り、エステルおよびアミド結合形成能における立体選択性と鋳型効果に焦点を当て、ポリマー合成反応を検討する。ペプチド合成に用いるアミノ酸についてD体とL体の両者から合成したペプチドを用いて、その立体選択性の発現機構にアプローチする。さらにペプチド配列に含まれるアミノ酸(Gly, Ala, Asp, Val)を混合し、合成を行って配列の再現性を確認する。
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