研究領域 | 冥王代生命学の創成 |
研究課題/領域番号 |
17H05239
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
成廣 隆 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 主任研究員 (20421844)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 微生物 / 進化 / ゲノム / メタゲノム |
研究実績の概要 |
これまでに純粋分離されている約15,000種の原核生物(バクテリアおよびアーキア)は、地球上に存在する無機化合物、有機化合物、ガス状物質、光エネルギー等を原資として、棲息環境に適応した多様な代謝機能を運用することで生命活動を維持している。生命が有する代謝経路の実体は、脱水素酵素や酸化還元酵素などの様々な酵素が触媒する化学反応の連続であるが、その要所要所で熱力学的にエネルギーを必要とする反応の進行を支えているのが「エネルギー保存システム」である。本研究課題では、我々が培ってきたオミクス技術を駆使することで、現存するエネルギー保存システムがどのような進化を辿ってきたのか? 冥王代に誕生した原始生命が確立した最初のエネルギー保存システムはどのようなものだったのか? 始原的なエネルギー保存システムが関与する代謝機能とはいったい何だったのか? といった疑問を解明することを目的としている。公共遺伝子データベース上で公開されているゲノム・メタゲノム情報から、現存する微生物が有する各種エネルギー保存システムのタンパク質アミノ酸配列を網羅的に収集して分子進化系統樹を作成することから着手した。今年度は、嫌気性菌が保有することが知られているエネルギー保存システムのうち、活性中心の金属分子にニッケルと鉄を有する[NiFe]ヒドロゲナーゼの一群の活性中心サブユニットやNADH結合サブユニット、それらに付随するプロトン輸送サブユニットを解析の対象とした。その結果、[NiFe]ヒドロゲナーゼの活性中心サブユニットの系統は、大きく分けて(1)プロトン還元-フェレドキシン依存型、(2) NADH/キノン依存型、(3)双方向/水素酸化型、(4)エネルギー保存型ヒドロゲナーゼ類縁複合体の4つのグループに別れることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、嫌気性菌が保有することが知られているエネルギー保存システムのうち、活性中心の金属分子にニッケルと鉄を有する[NiFe]ヒドロゲナーゼの一群に含まれる、F420補酵素還元型ヒドロゲナーゼ (Frh)、キノン依存型ヒドロゲナーゼ (Hya)、エネルギー保存型ヒドロゲナーゼ (Ech)、メチルビオロゲン還元ヒドロゲナーゼ (Mvh)、双方向型ヒドロゲナーゼ(Hox)、膜結合型ヒドロゲナーゼ(Mbh, Mbx)等の活性中心サブユニットやNADH結合サブユニット、それらに付随するプロトン輸送サブユニットを対象として解析を進めることができ、ヒドロゲナーゼを中心としたエネルギー保存システムの分子進化のあらましを解明することができた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、[NiFe]ヒドロゲナーゼの詳細な分子進化系統解析を行うとともに、電子分枝型ヒドロゲナーゼ等の[FeFe]ヒドロゲナーゼや、Electron Transfer Flavoprotein酸化型ヒドロゲナーゼ複合体 (Fix)、Fd:NAD+酸化還元酵素複合体 (Rnf)、フラビン酸化還元酵素-ヘテロS-S結合還元酵素複合体 (Flox-Hdr)、Formate dehydrogenase等の他のエネルギー保存システムの分子進化系統解析を実施し、進化距離・トポロジーを比較しながら原始的なエネルギー保存システムに支えられる代謝経路や、それらを有する微生物の特定を試みる。また、これらのエネルギー保存システムの冥王代類似環境での分布や多様性についても解析を実施する予定である。
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