脳腫瘍組織の物性解析に向けた,基礎技術の構築が本研究の目的である.本研究では超音波顕微鏡を用いて,音速や音響インピーダンスなどの音響特性を計測する.超音波顕微鏡は高空間分解能でスキャンすることができ,画像化することが可能である.一方,腫瘍の組織物性は病理画像から取得する.ここで,超音波像と病理画像は計測範囲や空間分解能に違いがある上,画像特性も大きくことなる.そのため,従来の位置合わせ技術では高精度化させることが困難であった. 本研究では平成29年度に病理画像の特性変換手法を構築した.Convolutional Neural Networkを用いて変換モデルを構築し,病理画像から超音波像を推定する手法である.生成された疑似的な超音波像の画像特徴は実際の超音波像と類似していることを確認した.これにより従来手法でも十分な精度で位置合わせが実施できることを確認した. 平成30年度では位置合わせされた画像セットを用い,組織特性と音響特性の関係解析を実施した.また,解析を実施するにあたり,病理画像から組織特性を算出する手法を構築した.本研究課題では細胞核や血球,細胞質の密度をパラメータとして算出した.このとき,病理画像から各組織領域を抽出する必要があるが,U-Net型の深層学習手法を導入することにより,高精度な抽出を実現した.関係解析を実施した結果,細胞核密度と音響特性に相関があることを確認した.また,音響特性から,脳腫瘍のグレードを大まかにLow GradeかHigh Gradeかを判定可能であることを確認した.
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