研究領域 | 医用画像に基づく計算解剖学の多元化と高度知能化診断・治療への展開 |
研究課題/領域番号 |
17H05280
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
山口 匡 千葉大学, フロンティア医工学センター, 教授 (40334172)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 超音波 / マルチスケール / マルチモダリティ / 病理診断 / 音響特性 / 非侵襲 |
研究実績の概要 |
本研究では、申請者が開発した技術を用いて取得する生体組織の音響物性データについて、計算機モデルを介して病理学的知見と結びつけることにより、統合的な生体物性モデルを構築し、臨床における非侵襲病理診断を実現することを最終目標としている。 本年度においては、正常、肝炎、脂肪肝、NASHモデルのラットの肝臓を中心として多様な生体組織を複数帯域の超音波を用いて計測し、各々の取得データから異なる空間スケールで散乱特性と音響特性を解析し、それらを二次元の物性マトリクスとして計算機上に再現可能とした。 生体組織の計測については、超音波のみでなく光やMRIなどの研究者と連携して同一生体を計測および評価し、異種モダリティ間での情報統合についても検討した。特に、薄切生体試料における光学像と音響特性像の融合について、肝臓のみでなく脳やリンパ節での応用も行い、それぞれの対象における情報統合の手法について検討した。 また、音響特性解析については生体から摘出した臓器などを計測する機構を大幅に変更するとともに、信号取得時のノイズの低減や解析時の精度向上などに関する新技術を併せて提案している。 提案技術によって、同一生体試料について臓器単位でのマクロな音響特性から細胞以下のサイズでのミクロな音響特性までを評価可能となっており、その成果を受けて、領域研究内の他の研究グループとの連携などの新展開も進んでいる状態にある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
各種生体組織の物理的性質の評価について、これまでに数mm四方の領域での解析が限界であったが、100mm四方の領域で安定した計測が可能となっている。また、信号解析と物性の評価においては細胞小器官単位での評価精度が担保されており、当初想定を超える条件での解析結果を得ることができた。 また、上記の成果などを受けて、領域研究に参加する多くの研究者との新規連携が進み、これまでに研究対象とされてこなかった臓器などへ提案技術を応用することができており、研究領域としての今後の発展が期待できる状況となった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度までに取得した各種生体組織の物理特性、音響特性、病理学的知見を計算機モデルとして構築する。将来的に任意周波数の超音波で組織性状を評価するためにはマルチスケールでのモデル化が必須であることから、計算機科学系の研究者と連携の上でモデル化を進める。 また、生体の計測および信号解析の各技術についての高精度化も併せて実施し、モデル化に必要となる情報を常にアップデート可能な状態とする。 対象組織は、肝臓、リンパ節、脳、膵臓を主なターゲットとし、それぞれについてマルチスケールかつマルチモダリティで使用可能なモデルを構築する。
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