本研究では、申請者らが開発した技術を用いて取得する多種の「生体組織の物理特性」データについて、計算機モデルを介して「病理学的知見」と結びつけることにより、統合的な生体物性モデルを作成し、臨床応用において「非侵襲な病理診断」を実現することを究極的な目標とした。 期間内においては主に肝臓について「細胞小器官レベルでのミクロ特性」と「複数小葉単位でのマクロ特性」についてマルチスケールで階層的に結び付けることにより、「三次元多層生体音響特性モデル」を構築することを行った。その発展として、病理診断スケールの音響特性を考慮した音波伝搬の計算機シミュレーションを具現化し、肝臓内の微小組織が生体組織の硬さ診断のスタンダードであるシアウェーブエラストグラフィに与える影響などについて検証を行った。 また、特に平成30年度においては、同領域の複数の研究者との連携研究に応用され、他種の生体組織におけるミクロスケールでの音響特性解析と病理像との融合について大きく進展した。加えて、細胞単体の音響特性を高精度に三次元評価するための基礎技術を提案し、計算機シミュレーションでの検証を踏まえて実測に応用するに至った。 上記の成果について、3編を学術論文化するとともに、多数の国際会議および国内学会で発表し、複数の発表が受賞している。なお、エコー信号解析による定量診断技術のいくつかについては、臨床データでの検討も進んでおり、実臨床での早期の展開が期待できる状況にある。
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