研究領域 | 医用画像に基づく計算解剖学の多元化と高度知能化診断・治療への展開 |
研究課題/領域番号 |
17H05282
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
花岡 昇平 東京大学, 医学部附属病院, 特任講師 (80631382)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 医用画像処理 / 深層学習 / 教師なし学習 / X線CT / コンピュータ支援診断 |
研究実績の概要 |
本研究は、畳み込みディープニューラルネットワーク(deep convolutional neural network; DCNN)を用いて、正常臓器の部分ごとの輝度値分布(アピアランス)をすべて、DCNNで学習してアピアランスモデル化することを目的としている。 現在の研究実績としては、正常症例の医用CT画像を多数用いて、脳の局所アピアランスをDCNNの一種である3-D convolutional autoencoder(3D-CAE)を用いてモデル化することに成功した。ここで、このアピアランスモデルは生成モデルである。つまり3D-CAEにある脳の部分画像を入力すると、それにできるだけ似たような部分画像を学習された範囲内で生成するものである。正常な脳の部分画像を入力するとほぼそのままの出力が得られるが、異常な脳の部分画像を入力すると、学習データの中にはそれに類似した部分画像がないため、元通りには復元されず、結果として異常が検出できるような手法となっている。 さらに、このアピアランスモデルを用いて、頭部CT画像における異常検知の問題に取り組んだ。異常検知の手法としては、与えられた部分画像について、元の画像と、3D-CAEが生成した生成画像との差分をとり、その差の絶対値の総和が大きい場合にはそれが異常であると判別するという方法をとった。これにより、粗大な病変(脳梗塞、脳出血など)については、3D-CAEをもちいて異常検知が行えることを確認した。性能評価ではROC曲線の下面積が0.87と、中等度の性能を持つことが確認された。以上の研究成を国際学会で発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず、当初の研究構想であった、「標準化座標を正解情報として用いるDCNNを学習し、そこからの転移学習により異常検知DCNNを学習させる」という手法は、現在困難につきあたっており、良い結果を得ることができていない。具体的には、手書き数字画像データセットであるMNISTを利用して異常検知システムを実装して研究を進めていたが、教師なし異常検知の実験では十分な結果が得られていなかった。このため、この手法を医用CT画像に応用するのは現時点では難しいと推察された。 一方で、3-D convolutional autoencoderを用いた異常検知手法も実装し、テストしてみた。MNISTでも試し、医用画像でもテストした結果、こちらがよりよい結果を返すと判断し、こちらの実装を行った。結果、頭部CT画像における異常検知にある程度成功し、粗大病変(脳梗塞、脳出血など)について検出が可能であることを確認することができた。 以上より、研究は当初の予定とは異なっているが、おおむね順調に進展していると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策は以下の通りである。 1. 3-D convolutional autoencoderをさらに発展させ、再構成されたパッチを出力とするのみならず、そのボクセルごとの推定誤差をも出力させるように改変する。入力パッチと出力パッチを比較するときにこの推定誤差をも考慮する。つまり、出力と入力の差が推定された誤差よりも大幅に大きい場合に、より積極的に異常と判定するようなシステムを構築する。これにより異常検知の性能向上を図る。 2. 当初予定にあった、「標準化座標を正解情報として用いるDCNNを学習し、そこからの転移学習により異常検知DCNNを学習させる」手法を実装し、医用CT画像でその性能を確認する。特に、現在は異常・正常の識別性能が弱いという問題を解決するため、複数のDCNNの併用など、新しい手法を考案・実装し、性能確認する。 3. 応用として、頭部CT画像のほかに、頭部MRI画像も対象として実験を続ける。とくに、造影MRI画像における脳転移検索のデータセットが手元にあるため、これを用いて実験を行う予定である。
|