研究領域 | 医用画像に基づく計算解剖学の多元化と高度知能化診断・治療への展開 |
研究課題/領域番号 |
17H05283
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
佐久間 一郎 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (50178597)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 生体光計測 / 蛍光計測 / 圧縮センシング / 構造化照明 |
研究実績の概要 |
1 )高速多点構造化励起光による励起蛍光画像計測系の製作と改良 従来の蛍光トモグラフィーシステムにおける計測速度を向上するために本研究ではDigital Micromirror Device(DMD)と高感度のMulti-Pixel Photon Counter (MPPC) (Cameral)により高速化を図る。DMDは多数のマイクロミラーが平面上に配列された素子である。これを用いて高速にランダムパターンの励起洗を標本表面に照射し、得られる蛍光信号を高感度カメラで計測するシステムを製作した。特に時間分解野の高いDMD素子と駆動回路を導入し、十分な計測時間分解能を持ちシステムとした。現在基本性の確認中である。 2) 再構成アルゴリズムへの圧縮センシングの応用検討 励起光パターンに対する試料内での光学散乱をモデル化し、さらに蛍光色素の量子収率を仮定することで3次元試料のボクセルに存在する蛍光色素濃度と試料表面で観測される蛍光信号の関係を線形モデルとして定式化した。心臓細胞膜電位モデルを組み込んだ興奮伝搬の2次元組織におけるコンピュータシミュレーションにより得られたSpiral波を3次元的に任意の方向に重ねた疑似的なScroll Waveモデルに対して考案した圧後リズムを適用しすScroll Waveの中心部分を表すフィラメントの3次元位置推定を試みた。またシミュレーションでは一定の測定誤差を雑音として加えて検討を行った。フィラメントの同定には研究者らが開発した心臓膜電位の位相分散解析による方法を適用した。この結果、3次元組織の中でフィラメントの位置を組織表面より2-3mmの深さまで推定可能であることを示唆する結果を得た。電気緊張電位の効果も含め3次元的な広がりを心臓細胞膜電位分布に対する性能検討や、実験的検証モデルの構築が課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)高速多点構造化励起光による励起蛍光画像計測系の製作と改良 工学系の基本分を製作済みであり、研究開始時に課題であった構造化照明素子の、構造化照明パターン切り替えに要する分解能により必要となる分解能測定時間分解能が得られていなかった点については、新たな素子と素子駆動回路を導入することで解決することができた。一方検出系に必要となるイメージインテンシファイアの不具合について現在解決法の検討を行っている。しかしながら基本的部分の構築は終了しており、H30年度の研究計画はほぼ実施できる状況である。 2)再構成アルゴリズムへの圧縮センシングの応用検討 様々な条件でのコンピュータシミュレーションによる検討を行い、適用可能範囲の見積もりがほぼできている。また使用する構造化照明パターンの適切性についても考察を進めており、来年度実試料を用いた実験に移行できる状況にある。この場合、推定結果の正しさを検証するための生体試料中での興奮波面発生法が課題となるが、点通電刺激により発生する仮想電極分極現象という比較的理論的推定が容易な現象を活用することで、実験系を構築できることに着想し、検討を進めている。したがって実験的評価についても結核にほぼ従って取り組むことが可能となっていると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
1)高速多点構造化励起光による励起蛍光画像計測系の製作と改良 現在進めている政策と調整を継続し、早期に実験可能なシステムを構築する。測光光学素子の感度向上を図る。 2)再構成アルゴリズムへの圧縮センシングの応用検討 昨年度に実施した2次元心造興奮電波モデルでの旋回性興奮パターンの積み重ねから、3次元モデルを拡張しより現実に近いスクロール波構造に対してもどの程度の再構成能力があるのかを検討する。また時間軸方向の情報の活用方法についても追加的に検討する。膜電位感受性色素で染色した実験動物摘出心灌流標本において、様々な部位からの電気刺激を加えることで、電気的興奮波を発生させ、蛍光動画像を計測し、心室壁内の興奮伝播の推定を試みる。この場合数点での細胞外電位計測結果など参照信号となるものも同時計測し、得られた結果の電気生理学的な妥当性の検討を行う。また最終目的であるスクロール波の3次元計測に関しては、その3次元構造の推定がシミュレーションを用いて比較的容易である、通電刺激直後に発する仮想電極分極(Virtual Electrode Polarization)現象により発生するスクロール波構造に対して、実験により提案手法を評価する。スクロール波の構造分析には最近提案した位相分散解析(Tomii N et al.、IEEE Trans BME, 63 (9), 1795-8211; 1803, 2015)の手法を適用し、スクロール波のコア構造を同定し、その3次元構造と理論解析から予測される構造の比較検討を行う。
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