研究領域 | 医用画像に基づく計算解剖学の多元化と高度知能化診断・治療への展開 |
研究課題/領域番号 |
17H05285
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
宮脇 陽一 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (80373372)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 形態特徴 / グリア細胞 / 深層学習 / イメージング / 病態 |
研究実績の概要 |
本年度は、二光子顕微鏡を用いたグリア細胞画像の計測を行いながら、グリア細胞の形状特徴抽出および疾患変異性特徴量の同定を既存データで先行開始した。この目標達成のため、以下の項目を実施した。 (1) マウス大脳皮質におけるグリア細胞画像の計測:健常状態のマウスの大脳皮質内のグリア細胞の形態情報を、二光子顕微鏡を用いて撮像した。生体内で蛍光色素を用いてグリア細胞を染色し、麻酔下で撮像を行った。 (2) 脳疾患の人工導入とグリア細胞の計測:(1)の実験後、人工的に脳疾患状態を作り出したマウス大脳皮質内のグリア細胞の形態情報を継続的に撮像した。 (3) 深層ニューラルネットを用いたグリア細胞形状特徴量の抽出:深層ニューラルネットで適切な特徴量を抽出するには大量の画像データを用いたパラメータの学習が必要であるが、実験で撮像するアストロサイト画像のみでは数が足りない。そこで今年度は、日常的な物体画像が大量に集約された画像データベースであるImageNet(Deng et al., CVPR, 2009)で学習されたパラメータを転用し、グリア細胞の形状特徴量を抽出することを試みた。 (4) グリア細胞の形状特徴量を用いた疾患状態予測と疾患変異性特徴量の同定:(3)によって抽出された形状特徴量のうち、どの特徴量が疾患時に大きな影響を受けるのかを多変量解析の手法を用いて解析した。深層ニューラルネットワークが抽出する網羅的パラメータを解析対象とすることで、従来法に比べ広い特徴空間を対象にした解析が可能になった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
年度当初に設定した4つの研究項目については順調に進行し、グリア細胞からの特徴量抽出とその解析がよい進捗を見せている。こうした手法で抽出した特徴量が何を表しており、どのように機能的影響を与えるのかを次年度以降解析していくにあたっての基盤が整備された状況であり、進捗は良好である。またこれまで得られた結果を論文として公刊する準備にも着手できている。以上の状況から、「(1)当初の計画以上に進展している」の評価が妥当であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、これまでの課題を継続しつつ、これまで得られた結果をもとにして、課題3であるグリア細胞の疾患変異性特徴量の可視化と応用に着手する。この目標達成のために、以下の項目を実施する。 (1)グリア細胞の形状特徴量を用いた疾患状態予測と疾患変異性特徴量の同定:これまでの研究で、抽出されたグリア細胞画像の特徴量のうち、どの特徴量が疾患時に大きな影響を受けるのかを解析してきた。これを更に進め、抽出された特徴量から疾患状態を予測可能かどうかを検証する。この予測モデルを詳細に分析することにより、予測可能性の観点から、疾患に強く関連した特徴量を同定することが可能になると期待される。 (2)疾患変異性特徴量の可視化:上述の方法により同定された特徴の次元が高い場合、グリア細胞のどのような見た目の形状変化に対応しているのかを解釈することが難しいという問題が残されることになる。これを解決する方法のひとつが、深層ニューラルネットワークの高次層の出力を低次層の特徴へと対応させる方法である。この手法を応用し、最終的には画像空間で特徴量を可視化することを目指す。 (3)空間特異性の解析:疾患によって強い特徴量変化をうける細胞群に特定の共通性があるかどうかを調べる。共通性の指標として、例えば細胞同士の近接性に着目することから開始し、他の共通性も並行して探索する。 (4)他の生体画像解析への応用:グリア細胞の解析で得られた知見や開発した手法を、他の生体画像解析へと応用することを試みる。我々の研究グループが保有するヒト脳機能画像や、マウスの神経細胞活動を撮像した画像などに同様の手法を適用し、その有効性を検証する。
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