公募研究
本研究では,胸部領域の筋・骨格・臓器・組織の動態機能の中でも,呼吸機能と密接な関係のある肋骨を含めた胸郭運動ならびに横隔膜運動に注目した.その動態機能の理解と評価を可能にする画像解析法を開発するために,今年度は下記(1)~(3)に取り組んだ.(1) 軟部組織X線画像の作成(2) 横隔膜運動の可視化・定量化プログラムの開発(3) 胸郭・横隔膜運動情報の有用性の検証対象は,基礎疾患として慢性閉塞性肺疾患(COPD),間質性肺炎,肺線維症,気管支喘息,気胸,肺癌,心不全,脊椎側弯症などを有する125症例(2015年12月~2017年10月に撮影,うち60症例は肺葉切除等の手術前後で撮影)ならびに,豚の無気肺モデル(6匹)を解析対象とした.管電圧120 kV,パルス線量4.0 mAs/pulse,撮影レート15 fps,撮影距離2.0mにて,呼吸過程を10秒間撮影した合計150枚のX線動画像から成る.軟組織X線動画像を作成するために肋骨陰影抑制処理を胸部X線動画像に適用した.安定した動画像解析を実現するために,患者体動やX線出力ゆらぎを低減するための各種補正法を開発した.また,横隔膜位置(肺尖部から横隔膜までの距離)の呼吸による変化,その最大変化量(可動域),横隔膜の形状変化を可視化・定量化する画像解析プログラムを開発した.開発した画像解析プログラムを使用して,横隔膜運動量と,胸郭運動や肺機能(肺活量)との関連を検証した.肋骨陰影のない軟組織X線動画像を解析対象とすることで,計測精度が向上することを確認した.さらに,肺葉切除症例については切除部位と手術前後変化の関連を検証し,術後の経過観察における横隔膜運動計測の有用性を示す結果を得た.豚の無気肺モデルにおいて,異常肺の横隔膜・胸郭運動が健側肺に比べて有意に減少することを確認した.これらの研究成果を国内外の学会で発表した.
2: おおむね順調に進展している
横隔膜の動態機能を理解するための画像解析プログラム開発と,新規症例データの収集を並行して行うことで,研究を効率的に推進した.当初計画していた3つの課題をいずれも予定どおりに行うことができた.特に(3)胸郭・横隔膜運動情報の有用性の検証については,人工的に病変を作成した豚の無気肺モデルを検証対象に加えることで,臨床試験における検証結果をより確かなものにできた.現在,ここまでの研究成果を英語論文としてまとめている段階にある.
H29年度の上記成果にもとづき,H30年度は(4)横隔膜運動の理解:正常な胸郭・横隔膜運動のパターン化と異常な胸郭・横隔膜運動の特徴ならびに肺野内濃度変化との関連の検証,(5)胸郭・横隔膜運動評価のためのコンピュータ支援診断(CAD)システムの開発:正常パターンからの逸脱を根拠に異常を検出するCADシステムの開発,に取り組む.4次元CTをもとにモデル化された仮想人体(Computational phantom)を対象に,シミュレーション研究を追加で行う予定である.
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 5件、 招待講演 2件) 図書 (1件)
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