研究領域 | 医用画像に基づく計算解剖学の多元化と高度知能化診断・治療への展開 |
研究課題/領域番号 |
17H05293
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
平田 晃正 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00335374)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 脳刺激 / 電気刺激 / 磁気刺激 / 刺激閾値 |
研究実績の概要 |
電気刺激最適化のための脳誘導電流推定ソフトウェアを改良した。手術時を模擬するために、術前の医用画像より開頭時を模擬可能な計算人体モデルを生成した。計算人体モデルでは、十二の組織から構成されており、分解能は0.5mmである。電極を脳表にあてる直接電気刺激では、電極と脳表の接合面のモデル化が重要であること、特に、脳表付近の水分(脳骨髄液の厚さ)が電極インピーダンスに影響を与えるため、ばらつきが大きいことがわかった。本要因により体内誘導電界は最大で2-3倍生ずること、また、分解能を更に向上させなければならない場合もあることなどがわかった。さらに、人体組織の層構造を把握するために、電流流れの異方性(電流の流れやすさの方向依存性)のモデル化を行い、ばらつきの影響について検討した。その結果、特に、筋肉の異方性により最大で2倍程度の差異が生ずることがわかった。 電気刺激による実験結果の刺激閾値と計算結果の比較による刺激閾値同定を行うための検討を行った。その際、連携研究者より提供頂いたデータを参考に、位置、刺激電流強さの設定を行った。また、計算機上でその値を再現するために、測定データを保存頂いたものを提供いただいた。複数の刺激方法対して検討を行い、電気刺激では脳表に対して垂直成分の電流が、磁気刺激では脳表に対して水平方向の電流が支配的となるため、運動誘発電位の発生メカニズムが異なることなどが推定された。また、複数の刺激を扱うためのコイル位置、角度を計算機上で適切に再現できるようなソフトウェアを開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画書に記載した内容を概ね達成した。
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今後の研究の推進方策 |
連携研究者と協力の上、磁気刺激法による電流閾値の同定を行う。平成29年度に得られた知見に基づく物理パラメータを利用し、非侵襲磁気刺激の様相を計算機上で再現する。電気刺激では、電流密度のベクトル方向と神経方向の内積が重要であると考え、計算機上で刺激を再現するためのパラメータの調整などを行う。磁気刺激装置の位置を保った上で、閾値を同定、物理モデルに組み込む。 また、施術では、刺激装置は頭部表面と並行になるよう配置されている。頭部と刺激装置の典型的な位置関係を基準とし、脳内で誘導される電流を解析する必要がある。現状では、この基準位置決め作業にすら時間が取られるため、基準の刺激位置以外の報告例がほとんどない。従って、実測を見据えたシステム開発が必要である。本研究では、複数回(3-10回程度)の刺激を実施(図3参照)、数理的な方法により、刺激されたであろう部位特定の高精度化を実現、可視化技術を開発する。さらに、頭部に対して任意相対位置に刺激装置を置く状況を可視化できるシステムを開発、医師など非専門家でも高速に最適化を実施できるようにする。
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