研究実績の概要 |
私たちは、世界最大のヒト胚子コレクション(Kyoto Collection)由来の立体情報(MRI, 位相CT等)を用いて、ヒト器官形成期(約5-10週)の諸器官の形態形成についてデータを蓄積、報告し一定の成果をあげている。これらは、諸器官についての立体的形態と計測を中心に基礎的なデータを蓄積したものである。同手法は、上記の古典的な組織形態学的アプローチの限界を回避でき、全身を網羅的に観察することを可能にした。次の段階として、多元計算解剖学的手法を加え解析を進めることとした。本年度は、まず、四肢骨格器系のうち胸郭領域を主たる解析対象とし、肋骨、椎体の形状をもとに、胚子期の胸郭の形状の変化を検討した。 Carnegie stage (CS)17-23計36体のヒト胚子を対象に,MRI,位相CTを用いて高解像度の画像を取得した。84箇所/標本の3次元座標を肋骨、椎体上に設定し、CSごとの基本的な形態学、形態計測学的検討を行った。さらに、主成分分析も行った。第1主成分は、胸郭の体積の増加、肋骨先端の伸長であった(寄与率94.0%)。第2主成分は、CS20, 21に特徴的にみられる胸骨下部の突出と、その後CS23にかけて増大する肋骨の形状変化、肋骨側方背部の屈曲、後方への突出であった。 骨格器系として、骨盤、大腿骨についても同様の検討を開始し、現在解析中である。MRI,位相CT画像については画像取得を継続して行っており、また、より高解像度の画像取得のための検討を継続することで、解析対象例の充実化を計っている。
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