申請者は,世界初の試みである,1体の日本人献体脳を用いて,脳表から組織・細胞構造までの形態解剖・生理情報を内蔵した精緻なデジタル脳図譜}を開発中である.当該研究は,この標準脳図譜を基盤に,1)性別・年齢(時間軸)や疾患(病理軸)などに特異的な多元脳図譜データベースと,2)これに基づき標準脳図譜を変形させ,脳内構造の個人差・疾患特異性に対応した患者固有脳図譜推定法を構築することで,次世代テイラーメイド脳外科手術支援システムの開発を目的とする. 平成30年度では,複数の脳図譜間の対応付け法を構築した.データベース構築には,脳図譜間の対応付が必要である.ここで,脳図譜は,脳表上や脳内部にある頂点と,それを接続した四面体からなるボリュームモデルである.一方,ヒトの脳形状が異なり,また異なるヒトの脳図譜ボリュームモデルは.必ずしも同一頂点数・パッチ数とは限らない.そこで,脳図譜ボリュームモデルを,形状が単純な目標体に写像する方法を構築した. 6つの脳のボリュームモデルを使って,平均的な脳形状を有する目標体に写像する実験を行った.ここで,脳ボリュームモデルは,脳表と2つの内部構造(脳室1:側脳室と第3脳室,脳室2:第4脳室)を持つ.いずれの写像においても,提案手法は脳ボリュームモデルを四面体の自己交差を極力少なくしつつ,モデルを目標体に写像できたことを確認した.また,この写像結果から,逆に目標体のボリュームモデルから脳図譜を復元することで,全ての脳図譜を目標体のボリュームモデルで統一的に記述でき,脳図譜間の対応付けが可能となった.
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