公募研究
神経膠腫は中枢神経系に発生する希少がんで、手術・放射線治療・化学療法を組み合わせた集学的治療が実施されているが、予後不良な疾患である。神経膠腫は分子生物学的には数種類の異なった機序で発症していることが明らかになってきており、分子生物学的手法を用いた新たな病態理解・診断・治療のアプローチが求められている。腫瘍の分子情報の取得には腫瘍組織の採取が必須であり、脳腫瘍の場合には開頭術という侵襲的な手技を経由する必要がある。このような侵襲的な手技を回避すべく、radiogenomicsもしくは人工知能という新規技術を発展させて、放射線画像という非侵襲的な診断技術で腫瘍の分子情報の取得を試みようとするのが本研究の主たる目的であった。本研究によって、放射線画像から神経膠腫の主たる遺伝子変異(特にIDH遺伝子変異)を高精度で診断する(正診率80%以上)技術開発が成功した。さらに、放射線画像解析に人工知能支援を導入することで、従来のRadiomics法と比較して、診断精度の向上が見込まれることも明らかにすることができた。脳腫瘍に限らず、本研究手法が大規模臨床試験など臨床医学における大規模データを網羅的に解析し、従来型の解析では明らかにすることが出来なかった「画像」と腫瘍の「分子生物学」の関係性を明らかにでき、ビッグデータの活用、解析が推進されている昨今、全身疾病の「画像」と「分子情報」の統合解析を推し進める上で極めて重要な知見を得ることができた。
2: おおむね順調に進展している
平成29年10月、本研究と研究内容が近いデープ ラーニング(機械学習アルゴリズムの一種)を 用いた脳腫瘍の画像分子遺伝学診断技術開発に 関する研究成果が、他の研究グループより発表 された。本研究遂行上、当該成果を踏まえてRadiogenomicsを再検討・再設計する必要が生じたものの、当初の研究目的を概ね達成している。
本研究課題が目的としていた、人工知能支援下での神経膠腫におけるRadiogenomics研究は当初の研究計画通り遂行された。しかしながら、主たる遺伝子変異であるIDH変異を持ってしても、その推定精度は85%程度に留まっており、実臨床での実装を考えると、改善の余地を残している。今後の研究方向としては人工知能が「誤診断」した理由の一つ一つを明らかにし、人工知能が「不得手」とする症例の洗い出しを行いつつ、診断アルゴリズムの改善を行っていくことがある。また、本研究アプローチが神経膠腫に対していは有用であることが明らかとなったが、他の中枢神経系疾患への技術応用・転用も積極的に検討していく必要がある。
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すべて 雑誌論文 (17件) (うち国際共著 1件、 査読あり 17件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 3件)
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