研究領域 | 地殻ダイナミクス ー東北沖地震後の内陸変動の統一的理解ー |
研究課題/領域番号 |
17H05310
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
宇野 正起 東北大学, 環境科学研究科, 助教 (50748150)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 反応誘起応力 / 反応誘起破壊 / 吸水反応 / 流路形成 / ペリクレース / 蛇紋岩化作用 / 粘土鉱物 / 膨潤圧 |
研究実績の概要 |
本年度は,独自に開発したその場観察応力測定装置により,任意の温度・流体圧条件下における吸水反応の反応誘起応力の測定に成功し,その温度依存性を明らかにすることができた.反応誘起応力測定の再現性は天然サンプル・アナログ物質を用いた様々な先行研究で困難とされてきたが,本研究では装置の歪みを最小限にまで抑える設計により,封圧化での反応誘起応力の系統的な測定に初めて成功した.具体的には,ペリクレースとH2Oからブルース石を生成する吸水反応[MgO + H2O → Mg(OH)2]における反応誘起応力の温度依存性を調査した. ペリークレース粉末を加圧整形したペレットを出発物質とした実験では,発生した反応誘起応力は40 MPaを越える高応力であり,反応誘起応力が岩石の破壊強度を超えうることを実験的に示すことが出来た.また,反応誘起応力には温度依存性があり,高温ほど高い最高応力値を示す.高温ほど誘起応力の駆動力であるギブス自由エネルギー変化は低くなる一方,反応速度は早くなるため,反応誘起応力は反応速度に強く依存することが明らかになった. ペリクレース焼結体を出発物質とした実験では,60 MPaを越える高圧力が発生し,焼結体が粒界沿いに破壊したことが確認された.すなわち,反応誘起応力により多結晶焼結体が破壊することを示した.焼結体の反応誘起応力による破壊実験は継続中である. また,本研究で開発されたその場観察応力測定装置により2011年東北地方太平洋沖地震の震源断層の貴重な断層粘土試料の『膨潤圧』を測定する実験が行われ,膨潤圧の断層強度への影響が明らかになりつつある.これは,本研究から発展したものであり,研究の裾野が広がりつつある.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
独自装置の開発により,反応誘起応力の温度依存性を明らかにすることが出来た.また,反応誘起応力による,多結晶焼結体の破壊に実験的に成功している.さらには,本研究で開発したその場観察応力測定装置は,断層粘土の膨潤圧の研究へと発展している.
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今後の研究の推進方策 |
本年度は,反応誘起応力の温度依存性・反応速度依存性と,多結晶焼結体の破壊に実験的に成功した.来年度は,本研究で開発したその場観察応力測定装置を改良することで,反応誘起応力発生時の透水係数変化を測定する.特に,多結晶焼結体の反応誘起割れによる透水係数変化を観測し,その温度依存性を測定することで,吸水反応の反応速度が流路形成に与える影響を明らかにする. また,個別要素法(DEM)による反応誘起割れの数値計算を行い,実験生成物の亀裂・透水係数と比較する.このモデルを沈み込み帯に適用することで,沈み込み帯における反応誘起割れに伴う流路形成過程を明らかにする.
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