研究実績の概要 |
本年度は,高温高圧吸水反応浸透率測定装置を立上げ,高温高圧下での吸水反応による浸透率の時間発展の測定に成功し,その温度・封圧・流体圧依存性について明らかにしつつある.また,前年度に開発したその場観察応力測定装置を改良し,高精度流量計を導入することで,その場観察応力測定と反応率・反応速度測定の同時測定が可能となり,応力発展と反応速度の関係を経時計測することができた. 吸水反応における浸透率測定では,ペリクレース焼結体に対して150~300°C, 封圧10~45 MPaで流通式反応試験をおこない,その浸透率変化を測定した.その結果,吸水反応の進行とともに急激な空隙閉塞と浸透率低下がみられること,また,浸透率低下率は封圧とともに増大すること,体積膨張によるスリーブSUS管の破壊がおこること,SUS管の破壊は反応速度の早い高温側で早く起こることが明らかになった.スリーブSUS管の破壊は意図したものではなかったが,吸水反応による急速な応力発生をあらわしている.均質なペリクレース出発物質では,期待されていたような浸透率の増加は確認されなかったものの,供試体の外側に対して顕著な応力発生が起きていたことが確認され,流体供給や反応物質の不均質な分布が,浸透率の増加に重要であることが示唆された.また,テフロンスリーブを用い,局所的な流体供給を行った実験では,反応の進行とともに浸透率の変動が確認され,亀裂生成による浸透率上昇が確認された.上記の結果より,吸水反応による流路発展には,反応速度と変形速度の競合のみならず,流体・反応物質の不均質性が重要であることが示唆された.
|