公募研究
大地震の発生時には断層が高速・大変位運動するため、断層内部に顕著な摩擦熱が発生する。その摩擦熱に起因した断層内部の物理化学プロセスによって、地震時の断層強度やすべり挙動が支配されていることが、今世紀に入って明らかになってきた(例えばRice, 2006)。地震時の断層挙動に対する温度の重要性が広く認識される一方、震源核が形成され地震発生時のすべり速度に至るまでの中速領域(秒速数mm~秒速数cm)に対する温度効果の見積もりはこれまでほとんどなされてこなかった。しかし、震源核が形成され断層破壊が伝播しても、それが大地震に繋がるか否かの鍵を握るのは地震発生直前の中速度領域での摩擦特性である。そこで本研究では低温~高温条件下での中速摩擦実験を実施し、岩石の摩擦特性や摩擦発熱が背景温度の変化に伴いどのように変化するのかを検証した。昨年度から、実験にドレライトを使用していたが、今年度は比較物質として花崗岩を使用し、岩石の摩擦強度や摩擦発熱に対する背景温度の効果とそれに対する物質依存性の有無について検討した。実験には千葉大学設置の回転式高温摩擦試験機を用いた。その結果、ドレライトは、少なくとも500 ℃までの温度条件では、高速条件下で、温度が高くなるにつれて速度弱化が始まる速度がより低速側にシフトするのに対し、花崗岩では背景温度100℃の摩擦強度が高く、さらに温度が上昇すると定常摩擦係数は温度の増加とともに減少すること、また300℃を超えると再度背景温度の増加に伴い強度が大きくなることが確認でき、高温高速条件下では顕著な強度の増加が見られた。これは、内陸地震発生時には破壊は深い領域へは伝播しづらい可能性を示唆する。摩擦発熱量は背景温度が低い時は物質依存性は比較的小さいが、高温側では熱破壊や鉱物反応の違いにより影響を受ける可能性が高い傾向がみられた。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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Tectonophysics
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https://doi.org/10.1016/j.tecto.2020.228429