震源メカニズム解を用いた地質体の摩擦係数推定方法を、東北地方太平洋沖の震源メカニズム解に適用することで、東北地方太平洋沖における地質構造の強度の空間不均質を推定した。前年度の検討の結果、開発した解析手法を適用するためには高いデータ密度が必要であること、日本周辺であっても強度の空間不均質が存在する可能性が明らかになっていた。そこで、本年度は、特に震源メカニズム解データ密度が高く、2011年東北地方太平洋沖地震が発生した東北地方太平洋沖において、解析を実施した。その結果、2011年東北地方太平洋沖地震において大きく滑った地域がその地域を挟む南北の地域よりも、プレート上盤を構成する地殻の強度(摩擦係数)が高いことが明らかとなった。今後この解析結果と、海底地形およびプレート形状から、Coulomb wedgeモデルを介して、プレート境界断層の強度(摩擦係数)の推定が見込まれる。 本研究において推定された地質構造の強度からプレート境界断層の強度推定を行う際に立脚するCoulomb wedge モデルは、力学モデルとして発達してきた。そのため、当該モデルと天然の地質を比較するには、力学構造的な特徴のみしか適用できなかった。そこで、Coulomb wedgeモデルと天然との比較を他の情報を用いて行えるように、被熱構造モデルへの拡張を行った。研究の結果、実際に天然で観察される被熱構造と、モデル中での被熱構造は良い対応を示した。 さらに、本研究は新学術領域研究「地殻ダイナミクス」公募研究として実施しており、関係者との共同研究として、2016年熊本地震発生域を含む地殻構造に関する成果を得た。弾性波トモグラフィおよび重力探査の結果から、九州北部地域において地殻内に開口性の空隙を含むことが明らかとなった。これらの構造は、九州北部地域が南北制の引張を受けた変形をしていることに起因するものと考えられる。
|