研究領域 | 特異構造の結晶科学:完全性と不完全性の協奏で拓く新機能エレクトロニクス |
研究課題/領域番号 |
17H05323
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
本久 順一 北海道大学, 情報科学研究科, 教授 (60212263)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 半導体ナノワイヤ / 縦型トランジスタ / 分子線エピタキシャル成長 / 選択成長 |
研究実績の概要 |
本年度は、まずRF支援分子線エピタキシャル(RF-MBE)法を用いた選択成長法によるGaNナノワイヤの形成に向け、本研究開始以前の成果もあわせた上で、成長条件の最適化を試みた。まず、選択成長マスクとしてはナノワイヤ形成のためにはTiが最適であること、成長温度の上昇とともにマスク上の堆積が抑制され良好な選択成長が実現されると同時にナノワイヤ成長速度が低下すること、窒素供給量の増加とともにマスク上の堆積物が増加して成長の選択性が失われること、そしてGa供給量の増加とともにナノワイヤ高さが増加することなどを確認した。そしてこれらの結果から、ナノワイヤ形成のための成長条件最適化の方向性として、成長温度を上昇させると同時にGa供給量を増加させることが必要であることを明らかにした。そして実際にこの指導原理のもと成長条件を最適化した結果、目標としていた断面寸法100nm以下のナノワイヤを高密度(ナノワイヤ周期200nm)および高充填率(25%)で形成することに成功した。また、伝導性探針を有する原子間力顕微鏡装置を用いて、ナノワイヤ形状と電流ー電圧特性の評価を行った。その結果から、選択成長により形成したナノワイヤには比較適高濃度のドナー不純物が存在することが示唆された。そして、半導体ナノワイヤを用いた縦型FETの作製について、従来のプロセス技術の有効性を確認するとともに、本研究で取り扱うGaN系のナノワイヤ縦型FETに適したプロセス技術を検討した。 以上に加えて、本新学術領域における他の研究グループとの議論を通じ、本研究で取り扱うナノワイヤならびに関連の特異構造の電気的特性、界面物性評価とその解明に関する共同研究へと展開することを確認するとともに、今後の研究により解明すべき問題や新たな研究の方向性などについての知見を深めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
成長条件の最適化および選択成長マスク寸法の最適化を実現することにより、初年度に目標としていたナノワイヤの断面寸法サイズならびに充填率を達成することができた。しかし、成長装置の不具合の時期が想定以上に長くなってしまったため、試料の成長回数を予定ほど行うことができず、このためナノワイヤの高さは260nmにとどまり、目標としていた2μmには到達できなかった。装置のメンテナンスも終了したので、また現在の条件でも成長時間を成長速度に応じて増加させれば必要な長さのナノワイヤは得られるので、この課題に関する遅れは軽微なものである。一方、伝導性の探針を用いたAFM測定により、ナノワイヤの電気的特性に関する重要な知見を得ることができ、今後の研究を進める上で重要な情報とすることができた。そして、FETの作製プロセスに関しては、実験的な検討としては従来手法の有効性に留まり、新規と呼べるほどの進展は得られなかったものの、本新学術領域研究の他の研究班と議論をすることによって、FET作製のより具体的なプロセス手法とともに、共同研究の方向性や、本研究の展開可能性について明らかにすることができた。以上のことから研究はおおむね順調に進展していると結論できる。
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今後の研究の推進方策 |
まず前年度に引きつづき、縦型FETに利用可能なGaNナノワイヤをRF-MBEによる選択成長法を用いて形成する技術を確立する。特に必要なナノワイヤ長さを確保するため、当面は長時間成長により対応するが、成長速度のさらなる向上だけでなくドナー濃度低減も考慮に入れて成長条件の見直しを行う。また縦型FETの作製プロセスを実験的に早急に進める。特にこれまでに成長してきており試料として蓄積されているIII-V族の化合物半導体ナノワイヤを用いて練習的なプロセスを重ねる、あるいは本学術領域の他の研究班からの試料提供を受ける、さらには成長に頼るだけでなく、ナノワイヤをエッチングなどの微細加工技術を用いて作製するなど、成長にかかる時間を省略しつつ時間を効率的に使いながらGaN系ナノワイヤ縦型FETの作製技術の早期構築を目指す。これに加えてヘテロ構造を有するナノワイヤの成長に関する実験を進めていくが、AlGaN系材料は装置の不具合の影響を強く受けやすく、研究が順調に進展しない危険性も高いため、超薄膜InNをGaNナノワイヤ中に形成する実験を優先的に行う。
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