公募研究
本研究は、物質の完全性と不完全性の協奏により開拓される新機能エレクトロニクスの研究分野を探求する新学術研究領域である。このような研究領域において、単結晶が有する結晶の完全性と同時に存在する空間の自由度などの局所構造として存在する結晶の不完全性を詳細な構造解析により理解して、構造の観点から発現するフォノンの非調和性と電子物性との相関を材料および物質の作製、その局所構造解析、理論による解明、デバイスへの応用へと展開する研究を趣旨としている。本研究においては、空間自由度を有する結晶のブラベ格子周期秩序を有する単結晶に秩序の乱れを導入して、秩序と無秩序のバランスおよび相乗効果により新しい物性を創出する事を意図して研究を遂行した。本年度に行なった研究は二項目である:(1)空間自由度の大きな空間に閉じ込められた原子の異常振動に起因する非調和フォノンの創出とそのエネルギー変換に関する研究、(2)無秩序状態が創出するエネルギー準位の広がりとトラッピング準位を利用した新しい両極性有機半導体電極の創出。(1)空間自由度と非調和フォノンの研究に関しては、クラスレート型結晶に関して提案していた統一概念を、パイロクロア型およびスクッテルダイト型の結晶を含めて適用できる可能性を探った。(2)無秩序構造を利用した両極性有機半導体電強に関しては、新しい電極の概念を実際の物質に適用して、実現できる事を示した。今回行なった研究結果である(1)空間自由度が創出する非調和フォノンの統一的描像と(2)有機半導体における新しい電極の概念とその実証は、物質の完全性と不完全性の協奏により開拓される新機能と言う観点では、極めて重要な研究結果である。
1: 当初の計画以上に進展している
クラスレート型物質で提案していた、大きな自由度を有する微小空間内に閉じ込められた原子の運動の自由度と創出される非調和フォノンとの関係の統一方法が、他の類似物質であるパイロクロア型およびスクッテルダイト型物質においても適用され、代表的な3つの空間・間隙物質において亭エネルギーフォノンが統一できる可能性を示す事ができた。現在論文を執筆中である。また、有機半導体における両極性電極に関しては、有機分子の見秩序性を利用した連続準位の創出とピニング準位の創出を基本原理とする新しい有機半導体電極の概念を提案して、実験的に実証した。この新しい電極は、従来の仕事関数の調整を基本とする電極とは全く異なる基本原理にもとづいているので、空気中で安定な両極性(電子および正孔)電極として使用する事ができる。この結果は、特許として申請すると共に、Nature Comunicationsおよび日経産業新聞に掲載された。
現在の方針で研究を継続して、物質空間における自由度とフォノンの非調和性に関しては、クラスレート、パイロクロア、スクッテルダイトの三種類の代表的ナノ空間物質群に対して、概念の統一をはかり、個々の物質における相違点を明確にする。一方、有機半導体における新しい両極性電極に関しては、実証した実験結果をもとにその普遍性を実証して種々の応用の可能性を探る。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (10件) (うち国際共著 3件、 査読あり 10件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (19件) (うち国際学会 4件、 招待講演 2件) 備考 (1件) 産業財産権 (1件)
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