半導体光触媒の活性は結晶の構造の完全性・不完全性とそれに基づく電子状態,反応場を与える表面の状態に大きく影響される.我々は,チタン酸カルシウム微結晶(CaTiO3,CTO)に少量のランタン(La)を適量ドープすると光触媒的メタン水蒸気改質反応において高い活性を示すという結果を得た.そこで本新学術領域研究では,本光触媒において,ドーパントや酸素欠陥による特異構造と結晶成長・光触媒活性との相関を明らかにし理解することを目的とした.初年度は、Laと同じ3価のカチオンであるPr及びEuをそれぞれ少量ドープすると CTOの結晶成長は促進され多いと抑制されるという同様の結果が確認され,光触媒的メタン水蒸気改質反応では,適量のEuドープは活性を向上させることがわかった.一方で,ドープをせずにNaClを融剤として融剤法によりCTO微結晶を合成したところ,新たな可視光吸収帯が発現し,光触媒的二酸化炭素分解反応では活性にも影響があることが示唆された.そこで本年度は,本CTO光触媒において,ドーパントの結晶内での存在位置や分布と結晶成長と結晶構造の相関を明らかにするとともに,NaCl融剤の構造への影響を明らかにし,結晶の特異構造と光触媒活性との相関を明らかにし理解することを目的とした.検討の結果,主に,以下のことが見出された. 1)希土類やAl,Ga,Yなどの3価のカチオンがドープされ,酸素欠陥が少なく,比表面積が大きい場合に,光触媒的メタン水蒸気改質反応や光触媒的二酸化炭素分解反応におけるCTO光触媒の活性は向上することがわかった. 2)NaClを融剤として用いるとNaがドープされ酸素欠陥が適度に形成され光触媒的二酸化炭素分解反応活性が向上することがわかった.陽電子消滅法によりやや大きな欠陥構造も形成されていることも判明した.
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