研究領域 | 特異構造の結晶科学:完全性と不完全性の協奏で拓く新機能エレクトロニクス |
研究課題/領域番号 |
17H05340
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
富田 卓朗 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 准教授 (90359547)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | レーザー加工 / シリコンカーバイド / 単一光子源 |
研究実績の概要 |
次世代のワイドバンドギャップ半導体であるシリコンカーバイド(SiC)に電子線照射を行うことで点欠陥が生成されることが報告されている。この点欠陥からの光は明滅現象を示し、アンチバンチング測定によって単一光子であることが確認されている。このことは、SiC への適切な欠陥の導入が単一光子源の作製に繋がることを示している。そこで、本研究では電子線照射の代わりにフェムト秒レーザー光照射を行うことで単一光子源を作製することを目的とし、研究を進めている。 この研究目的を達成する為には多数の課題の解決が必要であるが、その第一歩としてフェムト秒レーザー照射によってどの程度の小さいサイズの加工痕ができるかを議論することが必須である。しかし、フェムト秒レーザー加工で作製される微小な加工痕は200nmを下回ると予想され、そのような加工痕を光学顕微鏡でその場観察することは不可能である。 このような微細な加工痕を観察するには光学顕微鏡よりも、空間分解能がより高い走査型電子顕微鏡観察が適している。特に、点欠陥のような微細欠陥の評価にはフェムト秒レーザー光照射後の表面を走査型電子顕微鏡でその場観察できるような実験系が適している。しかし、走査型電子顕微鏡は大掛かりで、その内部でフェムト秒レーザー光照射を行うことはこれまで実質的に不可能であった。そこで、申請者らが保有する小型卓上走査型電子顕微鏡 (テクネクス工房、Tiny-SEM 1710 型)を用い、この試料観察チャンバーのポートを石英窓に交換することで、フェムト秒レーザー光を石英窓から走査型電子顕微鏡の試料観察チャンバー内部に導入した。また、走査型電子顕微鏡外部からレンズでレーザー光を集光することにより、試料表面にフェムト秒レーザー光を集光・照射した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度、小型の卓上走査型電子顕微鏡を改造し、フェムト秒レーザー光入射のための光学窓を作製し、走査型電子顕微鏡に取り付け、走査型電子顕微鏡の真空引きや電子顕微鏡観察がフェムト秒レーザー照射の光学系と両立した状態で可能であることを確認した。その後、光学定盤上に走査型電子顕微鏡を設置・固定し、光学系の構築を可能な状態にした。 その上で、フェムト秒レーザー光を走査型電子顕微鏡内部に導入しようとしたところ、走査型電子顕微鏡の視野とフェムト秒レーザー光の光軸を一致させることが容易ではないことが分かった。これは、フェムト秒レーザー光の光軸のみならずフェムト秒レーザー光の集光光学系の焦点も走査型電子顕微鏡の試料ステージに合わせる必要があることが分かったためである。その結果、現時点で研究の進捗は若干遅れている。現在、この問題に対する複数の解決方法を試行・検討しており、近日中に解決できるものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
フェムト秒レーザー光の入射と走査型電子顕微鏡の視野を一致させることに時間がかかっているため、この調整の方法を根本的に見直し、走査型電子顕微鏡内にカメラを設置するなどの方法を用いて容易に調整ができるようにすることを検討していく。 一方で、フェムト秒レーザー光の集光を緩くし、スポット径を大きくすることで、光軸調整を簡単にする方法についても検討を進めていく。 それらの調整が完了し次第、シリコンからシリコンカーバイドへと対象物質を展開していくとともに、先行研究で報告されている、表面粗さに依存したフェムト秒レーザー加工過程のメカニズムの解明などについても取り組んでいく。
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