昨年度作製したフェムト秒レーザー光を入するために走査型電子顕微鏡に取り付けた光学窓からフェムト秒レーザー光を導入し、フェムト秒レーザー照射をシリコン単結晶基板に対して行った。走査型電子顕微鏡内でフェムト秒レーザー加工を行うためには試料を水平のままではフェムト秒レーザー光の入射角度が浅いため最大の光強度で照射を行っても加工痕が形成されないことが分かった。 そこで、試料角度をフェムト秒レーザー光側に30°傾け、照射を行ったところ、加工痕が形成された。さらに、走査型電子顕微鏡の視野の中心部にフェムト秒レーザー照射部か来ることが、その場観察の上では必要であったため、レンズやミラーを微調できるものに交換し、調整を行った。その結果、フェムト秒レーザーによる加工痕が走査型電子顕微鏡の視野の中心部で観察することができた。原理的にはこの手法で数千倍の拡大率まで観測できるようになったが、加工痕が大きかったため、実際には200倍の倍率で観察を行った。 フェムト秒レーザー照射は再生増幅器の発振モードを変化させることで、単一パルスの照射から可能であり、単一パルスでの加工実験を行ったところ10パルス程度では穴が開かず、1000発程度の照射で穴が開く現象を観測することができた。この結果はパルスの蓄積効果により加工痕がある閾値のパルス数で加工されたものと考えられるが、1000パルスの照射では1kHzの繰り返し周波数で行ったため、今後のより詳細な検討が必要とされる。 さらに、75パルスごとのレーザー照射を行うことで、加工痕が拡がっていく様子を連続的に観測することに成功した。この結果によるとテラス状のアブレーション痕がパルス数の増加とともに連続的に動いていることが確認され、フェムト秒レーザー加工に関する新しい知見を得ることができた。今後、この結果についての解析を進めていく。
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