研究領域 | 配位アシンメトリー:非対称配位圏設計と異方集積化が拓く新物質科学 |
研究課題/領域番号 |
17H05346
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
景山 義之 北海道大学, 理学研究院, 助教 (90447326)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 触媒 / 構造変化 / 微視的可逆性の破れ / 液晶 / キラル / 協同効果 / 自律運動 |
研究実績の概要 |
分子機械の構造変化を、熱力学の規律が働くマクロスコピックな継続運動へと変換するためには、空間的な対称性の破れが必要である。これに、時間的な対称性の破れ・反応の継続性が加わり、相や場で組織化することにより、マクロなレベルで自律的に動き続ける散逸分子システムを創出可能である。 このコンセプトの確立を目的に、本研究課題では、化学反応で連続駆動する有機金属触媒を、自己配向性を有する液晶分子を用いて集積し、供給したエネルギーを消費しながら自律的に駆動する分子システムを創出する。この研究を通じて、上記仮説の証明と、ミクロとマクロをつなぐ物理的な関係を追究し、自律駆動デバイス・能動的デバイス創出にかかわる基礎学理を構築していく。 平成29年度は、当初計画に従い、芳香族配位子を有したパラジウム触媒とシアノビフェニル系液晶分子を混合した液晶性触媒反応場を調製し、その反応場を利用した鈴木宮浦カップリング反応を行った。まずは、不斉炭素を持たない基質を用い、反応場の触媒活性を評価した。一般的な溶液系での反応と比較し、触媒反応効率の低下が起きたものの、目的のカップリング反応を進めることはできた。反応効率低下の理由は、反応が起こる表面が少ないこと、液晶分子自体の反応による目的反応の阻害、あるいは、触媒分子の構造変化自由度が液晶分子によって阻害された、などの原因が考えらえるが、三つ目の仮説の場合、触媒分子の構造変化が液晶分子の運動状態に影響を与えていることになる。このほか、基質の反応率に対して目的物の生成量が十分ではないなど、計画申請当初想定していた「研究上の困難点」が現れてきている。 これに伴い、困難が生じた場合の対処法として計画していた、自己集積膜(SAM)などの組織化膜を用いた実験系の準備にも取り掛かり始めた。なお、困難点の発生も含め、研究はほぼ計画通りに進行している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本計画は、萌芽的・挑戦的研究であることを明記のうえで、採択していただいた研究計画である。研究実施において、想定していた困難点とも遭遇したものの、全体としては想定通りに研究を推し進められた。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に引き続き、有機金属触媒を含有させた液晶を反応場に触媒反応を行い、液晶テクスチャの回転運動の誘起を狙う。昨年度は、準備段階としてアキラルな反応基質を用いて試行したが、今年度は本計画のキラルな基質を用いた反応に挑戦する。 また、バルク液晶を用いた実験系に加え、組織化膜を用いた実験、および加水分解触媒を用いた反応系での巨視的運動誘起を目指した実験を、短期の研究員の雇用と、研究協力者の増員により推し進める。これらの研究を通じて、「自律駆動分子デバイス」創出に向けた基礎学理の形成へとつなげる。
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