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2017 年度 実績報告書

脂肪族ポリイミン配位子によるアシンメトリック分子認識空間の構築

公募研究

研究領域配位アシンメトリー:非対称配位圏設計と異方集積化が拓く新物質科学
研究課題/領域番号 17H05347
研究機関北海道大学

研究代表者

猪熊 泰英  北海道大学, 工学研究院, 准教授 (80555566)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2019-03-31
キーワード錯体 / 単結晶X線構造解析 / 超分子 / 自己組織化
研究実績の概要

アセチルアセトン誘導体を繰り返し単位とする脂肪族ポリカルボニル化合物の単分散多量体を合成することに成功し、2量体から16量体まで様々な長さを持つ脂肪族ポリカルボニル化合物を得た。これらに対し、ヒドラジンを作用させることで、イソピラゾールがエチレン架橋された脂肪族ポリイミン配位子の合成に成功した。
イソピラゾール2量体の配位子に対し、亜鉛イオンを作用させることで2次元グリッド状の配位高分子が得られ、その構造を単結晶X線構造解析により明らかとした。また、イソピラゾール4量体の長い配位子と硝酸ニッケルとの反応からは、馬蹄状に曲がった配位子が円筒状に積み上げられた錯体が得られた。
さらに、パラジウムイオンを用いた錯形成をイソピラゾール2量体の配位子を用いて行ったところ、階層的に自己組織化が起こり、パラジウムイオンの当量に応じて生成しる錯体の構造が大きく変化することを、全ての錯体の単結晶を作成しX線構造解析をすることで明らかとした。この中でも、大過剰量のパラジウムイオン存在下で生じる配位子2つとパラジウムイオン3つから成る錯体は、コの字型のユニークな内部空孔を有しており、さらに溶媒のアセトニトリルが4ヶ所で配位したカチオン性錯体となっていた。そして、この錯体は、さらなる階層的自己組織化の足場として利用可能であることを見出している。この錯体をもとに、ゲスト分子が包接可能でかつ柔軟な空孔外壁を持つアシンメトリック分子認識場の構築に向けて配位子交換などの条件検討を行っている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

当初の計画では、脂肪族ポリカルボニル化合物から脂肪族ポリイミン配位子を得るための反応の条件検討がかなりの時間を要すると考えていたが、この配位子合成においてヒドラジンを用いたイソピラゾールへの変換が非常に高収率かつ迅速に進行する事を見出したため、計画以上に研究が早く進められた。さらに、イミンが32個もあるような巨大で単分散の配位子の合成にも成功したため、計画で想定していた以上の巨大で高機能な錯体および分子認識場が構築できるのではないかと期待している。長鎖のポリイミン配位子は、未だ錯体を選択的に合成するための条件が整っていないため、その条件検討を行い、単結晶X線構造解析を用いた構造決定を行う事で、本研究は大きく発展すると期待している。
また、脂肪族ポリイミン配位子から錯体を組み上げ、ゲスト分子を包接するための空孔を作る取り組みも、順調に進行している。亜鉛ネットワーク錯体を合成した際には、錯体の強度が弱く、すぐに構造が壊れてしまうという問題があったが、パラジウムイオンやニッケルクラスターを鋳型とする錯形成においては、溶液中でも安定に存在する多彩な構造の錯体を合成することに成功している。特に、パラジウムイオンを用いた階層的自己組織化では、巨大な空孔に加え、化学修飾可能な配位点を持った錯体が得られているため、この錯体を足場としたさらなる巨大空孔の構築を行う事で、当初の研究計画を達成することは可能であると考えている。

今後の研究の推進方策

研究計画を早期に実現した上で、初年度の研究で得られた発展的な研究結果をさらに伸ばしたいと考えている。
アシンメトリック分子認識空間の構築においては、パラジウムイオンを用いた階層的自己組織化の手法をイソピラゾール3量体以上の配位子にまで拡張し、より大きく、選択性の高い分子認識場を構築したいと考えている。また、当初の計画では、アシンメトリックを不斉分子という狭い概念のみで捉えていたが、領域会議等での研究議論を通し、この概念が非対称な金属クラスターや分子の立体配座、分子集合体のコンフォメーションなどにも適用可能であることに気付かされた。そこで、キラル分子のR体とS体の区別に留まることなく、アシンメトリック分子認識空間の多様な可能性を追求し、上記のようなゲスト分子の選択的包接を見当したいと考えている。
さらに、昨年度より領域内での共同研究もスタートさせている。本研究で得られた脂肪族ポリイミン配位子を使って、既存の方法では合成不可能な不安定金クラスターを合成し、その分光学特性などを解明するという試みである。この研究には、巨大な金属クラスターを多点で配位し安定化できる脂肪族ポリイミン配位子が非常に適した配位場を提供できると考えられるため、合成条件の見当から、得られるクラスターの構造解析、分光学的特徴の解析までを金属クラスターの専門グループとの共同研究として行うことを計画している。これにより、アシンメトリック分子認識空間の1つの大きな出口が開拓できると考えている。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2018 2017

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) 産業財産権 (1件)

  • [雑誌論文] 51.Oligoacetylacetones as Shapable Carbon Chains and Their Transformation to Oligoimines for Construction of Metal-organic Architectures2018

    • 著者名/発表者名
      Mitsuharu Uesaka, Yuki Saito, Shota Yoshioka, Yuya Domoto, Makoto Fujita, Yasuhide Inokuma
    • 雑誌名

      Communications Chemistry

      巻: 印刷中 ページ: 印刷中

    • DOI

      10.1038/s42004-018-0021-3

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 50.Chiral Crystalline Sponges for the Absolute Structure Determination of Chiral Guests2017

    • 著者名/発表者名
      KaKing Yan, Ritesh Dubey, Tatsuhiko Arai, Yasuhide Inokuma, Makoto Fujita
    • 雑誌名

      Journal of the American Chemical Society

      巻: 139 ページ: 11341-11344

    • DOI

      10.1021/jacs.7b06607

    • 査読あり
  • [学会発表] 高密度にカルボニル基を有する脂肪族ポリケトン上での 効率的ジケトン変換反応2018

    • 著者名/発表者名
      齋藤 結大 ・吉岡 翔太 ・猪熊 泰英
    • 学会等名
      日本化学会第98春季年会
  • [学会発表] オリゴピラゾール配位子の求心的および発散的相互作用点を利用 した金属錯体の合成2018

    • 著者名/発表者名
      上坂 光晴 ・ 吉岡 翔太 ・ 猪熊 泰英
    • 学会等名
      日本化学会第98春季年会
  • [学会発表] 柔軟な構造を有するオリゴイソピラゾール配位子の自己組織化 挙動の検討2018

    • 著者名/発表者名
      芦田記子・吉岡翔太・猪熊泰英
    • 学会等名
      日本化学会第98春季年会
  • [産業財産権] イソピラゾール化合物及びそれを含む錯体2018

    • 発明者名
      猪熊泰英、吉岡翔太、上坂光晴、芦田記子
    • 権利者名
      猪熊泰英、吉岡翔太、上坂光晴、芦田記子
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      特願2018-017420

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公開日: 2018-12-17  

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