研究領域 | 配位アシンメトリー:非対称配位圏設計と異方集積化が拓く新物質科学 |
研究課題/領域番号 |
17H05348
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
保田 諭 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 先端基礎研究センター, 研究職 (90400639)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 遷移金属ジカルコゲナイド / 化学気相蒸着法 / 非対称結晶 |
研究実績の概要 |
本研究では、錯体金属を二次元的に拡張した遷移金属ジカルコゲナイド(TMDC)結晶を化学気相蒸着法(CVD)により作製し、様々な異種表面との相互作用により歪んだ結晶構造をもつ、エネルギーバンド構造も変調された非対称結晶TMDCを創製することを試みる。得られた非対称結晶TMDCの電気化学水素発生触媒能について精査し、高性能な水素発生電極触媒を創製する知見を得る。 今年度は、金属表面に、TMDCであるMoS2やMoSe2をそれぞれCVD合成する技術を確立し、金属表面形状がTMDCの歪み誘起に与える影響について精査した。 それぞれのTMDCを多結晶Au表面上に合成する技術を確立した。得られた試料について、ラマン分光および走査型トンネル顕微鏡(STM)によって精査した結果、それぞれのTMDCには、金属接触による歪み誘起や電子状態変調の効果は観察されなかった。 一方、Au(111)単結晶表面上にこれらTMDCをそれぞれ合成した場合、TMDCの面外方向のみに歪みが誘起することをラマン分光法により明らにした。STM測定から、(111)表面―TMDC界面での格子不整合性による特異的な相互作用が、局所的に歪みを誘起していることを明らかにした。また、トンネル分光法により電子状態について評価した結果、従来の半導体的性質とは異なり、バンドギャップが大幅に狭まり、金属性の電子物性を有することも明らかにした。 以上、結晶金属表面上にTMDCを構築することで、TMDC結晶を非対称化しその電子状態を制御可能である基礎的知見が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
初年度において、異種金属表面との接触による幾何・電子構造が変調された非対称結晶TMDCを構築することに成功したこと、また、非対称化の機構についても実験的に明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度では、目標の一つである、実際に幾何・電子構造が変調されたTMDCの電気化学的物性評価を集中して行う。
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